Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般口演
消化器 肝腫瘍:治療②

(S659)

低分化型肝細胞癌のDEB-TACEにおける血流評価にソナゾイド®CEUSが有用であった一例

The utility of Sonazoid® contrast-enhanced ultrasonography in drug-eluting bead(DEB)-TACE for hepatocellular carcinoma: a case report

松江 泰弘, 利國 信行, 野村 匡晃, 中村 彰伸, 土島 睦, 堤 幹宏

Yasuhiro MATSUE, Nobuyuki TOSHIKUNI, Masateru NOMURA, Akinobu NAKAMURA, Mutsumi TSUCHISHIMA, Mikihiro TSUTSUMI

金沢医科大学肝胆膵内科

Hepatology, Kanazawa Medical Univercity

キーワード :

【症例】
73歳,女性.健診で肝機能異常が認められ近医を受診.肝腫瘍を指摘され当院を紹介受診.腹部造影CT検査で肝S7に径6 cm大の乏血性腫瘍が認められた.C型肝硬変が背景にあり,AFP 27.5 ng/mL(L3分画68.3%)と高値であったため,肝細胞癌が疑われたが確定診断に至らず,針生検を施行.病理結果は低分化型肝細胞癌であった.生検組織内には壊死成分も多く含まれていた.単発であったが,サイズが大きく肝予備能はChild-Pugh class Bと低下しており,切除やラジオ波凝固療法は困難と考えられた.腹部USでは,腫瘍は低エコー結節として描出された.ソナゾイド®CEUSを施行したところ,vascular imageにおいて,造影CTでは明瞭でなかった血流(染影)が結節辺縁部に認められ,Kupffer imageにおいて同部位は欠損像として描出された.経カテーテル的治療による効果を期待し,epirubicinと球状塞栓物質(HepaSphere)を用いたdrug-eluting bead(DEB)-TACEを施行した.治療中のDSAではtumor stainが淡くしか描出されず塞栓効果の判断も困難であった.しかし,治療後のCEUSでは結節辺縁部の染影はほぼ消失し,AFP値も低下した.数ヵ月後,結節は縮小傾向にあり,DEB-TACE有効と考えられたため,計4回治療を繰り返した.再発時は,造影CTでは描出困難な辺縁部の血流がCEUSでは初回と同様,明瞭に描出され,治療後それがほぼ消失するのが確認された.診断から14ヶ月経過し治療効果は維持されている.
【考察】
ソナゾイド®CEUSは造影CTやMRIでは困難な微細な血流の描出が可能である.この特質を利用し,本症例は乏血性にもかかわらず,CEUSによって治療の決定,効果判定が可能であった.DEB-TACEは新しいTACEの手法として近年登場し,本症例のように乏血性腫瘍に対する有効性も報告されている,CEUSはこのような症例の血流評価および効果判定にも有用であることが示唆された.
【結語】
ソナゾイド®CEUSは微細な血流の評価が要求される場面においても有効である.さらに肝細胞癌に対するDEB-TACEの効果判定にも活用しうる.