Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般口演
消化器 消化管

(S654)

超音波で観察し得た小児における腸重積症の検討

Study of intussusception in children observed by ultrasonography

前野 知子1, 横川 美加1, 市島 真由美1, 塩見 香織1, 前川 清1, 南 康範2, 樫田 博史2, 工藤 正俊2, 八木 誠3

Tomoko MAENO1, Mika YOKOGAWA1, Mayumi ICHIJIMA1, Kaori SHIOMI1, Kiyoshi MAEGAWA1, Yasuhiro MINAMI2, Hiroshi KASHIDA2, Masatoshi KUDO2, Makoto YAGI3

1近畿大学医学部附属病院中央超音波診断・治療室, 2近畿大学医学部附属病院消化器内科, 3近畿大学医学部附属病院外科

1Division of Ultrasound, Diagnosis and Treatment, KINDAI University Hospital Faculty of Medicine, 2Department of Gastroenterology and Hepatology, KINDAI University Hospital Faculty of Medicine, 3Department of Surgery, KINDAI University Hospital Faculty of Medicine

キーワード :

【はじめに】
腸重積症は,乳幼児に見られる急性腹症のなかでもっとも頻度が高い.早期診断・治療がが重要であり,感度・特異度が高くまた侵襲性の低い超音波検査が推奨されている.今回我々は,当検査室で観察し得た小児の腸重積症について,その超音波所見と臨床的背景についてまとめたので報告する.
【対象】
2006年から2015年の10年間に超音波検査で観察し得た0歳から15歳の腸重積症25例の超音波像,性別,発症年齢,症状,原因について検討した.
【結果】
超音波像は,全例でmultiple concentric ring signを認めた.病型は回腸結腸型が18例(72%),小腸小腸型が4例(16%),結腸結腸型が1例,分類困難が1例,回腸結腸型と小腸小腸型の混在が1例であった.性別では男児18例(72%),女児7例(28%)と男児に多くみられた.発症年齢は,0歳が3例,1歳が6例,2歳が5例,3歳が1例,4歳が4例,5歳が4例,9歳が1例,12歳が1例で,一般に多いとされる2歳以下は14例(56%)であった.症状は腹痛(間欠的を含む)がもっとも多く18例で認めた.腹痛を認めなかった7例はいずれも1歳以下であり,いずれも機嫌不良や間欠的啼泣を認めた.つぎに,血便(粘血便を含む)が13例(52%),嘔吐が10例(40%)であった.腸重積の原因として器質的病変を認めたものが6例(24%)で,IgA血管炎が2例,メッケル憩室炎が1例,良性ポリープが1例,虫垂炎が1例,悪性リンパ腫が1例であった.これらは3歳から9歳にみられ,2歳以下には認めなかった.器質的病変の認めなかった特発性19例(76%)のうち3例(16%)がアデノウイルス陽性であった.それ以外の16例は原因がはっきりしないが,うち13例は10mm以上の腫大した腸間膜リンパ節を認めており,先行感染が示唆された.
【考察】
器質的病変を認めた6例のうち4例が小腸小腸型(IgA血管炎2例,メッケル憩室炎1例)もしくは結腸結腸型(良性ポリープ1例)あり,重積部位を超音波検査で同定することは器質的病変を検出するうえで有用と考える.
アデノウイルス陽性であった3例のうち2例は治療に難渋した症例であった.1例は高圧浣腸整復法を5回繰り返した症例で,もう1例は腸管壊死を伴い壊死腸管切除術が施行された症例であり,より注意深い経過観察が必要と考える.
【まとめ】
腸重積症と診断された全例でmultiple concentric ring signを認めた.病型は回腸結腸型が多いが,小腸小腸型や結腸結腸型の2/3に器質的病変を認めた.アデノウイルス陽性例に治療難渋症例がみられた.