Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般口演
消化器 胆・膵②

(S652)

膵神経内分泌腫瘍における造影所見と病理学的所見の検討

Examination the observation of CH-EUS,CH-CT and pathological change of pNET

近藤 尚, 肱岡 範, 鈴木 博貴, 原 和生, 山雄 健次

Hisashi KONDO, Susumu HIJIOKA, Hirotaka SUZUKI, Kazuo HARA, Kenji YAMAO

愛知県がんセンター消化器内科

Gastrointestinal Medicine, Aichi Cancer Center

キーワード :

【背景】
膵神経内分泌腫瘍(pNET)は一般に多血性腫瘍である.一方で悪性度が高いほどCTでvascularityが低くなるとの報告がある.しかし造影EUS所見と悪性度との関係の評価は不明であり,また造影CTと造影EUSとの所見に乖離を呈する症例があり,その理由も明らかでない.今回,両者の造影態度に乖離を呈する症例の臨床病理学的意義を明らかにするために検討を行った.
【方法】
当院にて2007年から2015年までに外科的切除を行ったpNETは56例であった.このうち造影CTが単層のみであった症例(8例),造影EUSが動画で確認できない症例(13例),および超音波造影剤がレボビストを用いていた症例(6例)は除外した.残った29例において,造影CT(早期相/後期相)とソナゾイド®による造影EUSの両者の造影態度を評価した.CTにおいては早期相を主体の評価とし早期濃染がみられるものを多血性,造影効果が不良もしくは遅延性濃染されるものは乏血性とした.EUSについては開始20秒後に膵実質に比較し染影効果の高いものを多血性,低いものを乏血性とした.
【結果】
29例の背景は,性別(男:女 18例:11例)年齢(32〜80歳中央値51歳)腫瘍径(6.7mm〜49.2mm 中央値17.4mm)悪性度(G1:G2:NEC 18例:10例:1例)転移(有:無 4例:25例).24例(83%)の造影所見は両者が一致し,5例(17%)に乖離を認めた.一致した24例のうち,22例が両者とも多血性(92%),2例が両者とも乏血性(8%)であった.乖離を呈した症例では5例全例が,造影CTで多血性,造影EUSでは乏血性との判定であった.乖離例の腫瘍径中央値は19mm(8mm〜32mm).悪性度分類はG1/G2がそれぞれ2例/3例であった.病理学的特徴につき,両者とも多血性で一致(A群:22例),CTで多血性,EUSで乏血性の乖離あり(B群:5例),両者とも乏血性(C群:2例)の3群に分けて検討を行った.結果,A群は血管に富む間質を伴う腫瘍細胞が髄様性に増殖,B群は,desmoplastic changeによる線維成分の増生がA群に比べ目立った.C群はB群よりもさらに線維化が強く,硝子化が出現し,間質内血管も減少している傾向にあった.それぞれの所見の差は間質まで造影されるCTの造影剤と血管内に留まるソナゾイド®との性質の差によるところと考えられた.
【結語】
軽度の線維化は造影CTより造影EUSでより鋭敏に表されるものと思われた.それらを組み合わせることで線維化や間質血管の多寡をさらに詳細に推定することが可能であることが示唆された.