Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般口演
消化器 肝:症例②

(S639)

多数の肝内結節を呈した悪性リンパ腫の3例

Malignant lymphoma with multinodular hepatic lesions: report of three cases

齊藤 あかり1, 鈴木 克典1, 佐藤 純子2, 赤塚 れい子2, 伊藤 千代子2, 門間 美穂2, 大山 葉子3, 長沼 裕子4, 石田 秀明5

Akari SAITO1, Katsunori SUZUKI1, Junko SATO2, Reiko AKATSUKA2, Chiyoko ITO2, Miho MOMMA2, Youko OOYAMA3, Hiroko NAGANUMA4, Hideaki ISHIDA5

1山形県立中央病院消化器内科, 2山形県立中央病院臨床検査科, 3秋田組合総合病院臨床検査科, 4市立横手病院消化器内科, 5秋田赤十字病院消化器内科

1Department of Gastroenterology, Yamagata Prefectural Central Hospital, 2Department of Medical Laboratory, Yamagata Prefectural Central Hospital, 3Department of Medical Laboratory, Akita Kumiai General Hospital, 4Department of Gastroenterology, Yokote Municipal Hospital, 5Department of Gastroenterology, Akita Red Cross Hospital

キーワード :

【はじめに】
最近,肝臓に悪性リンパ腫病変を有する症例の報告が増加している.今回我々は,肝悪性リンパ腫の3例を経験したので,超音波画像を中心に報告する.
【診断装置】
東芝社製:Aplio500,XG.超音波造影剤:ソナゾイド®(第一三共社)で,造影は通常の肝腫瘍の造影方法に準じた.
【結果】
症例1:70歳代男性,C型肝炎の経過中に定期エコー検査にて偶然に発見された.AST 33IU/l, ALT 16IU/l, LDH 307IU/l, ALP 218IU/l,γ-GTP 43IU/l,可溶性IL-2レセプター2330U/ml,HCV genotype 1b,HCVRNA 6.8LogIU/ml.Bモードでは25mm〜70mm大の多発する低エコー腫瘤を認めた.造影エコーでは,均一濃染パターンを示した.CTでは肝実質より低濃度であり,造影のいずれの相でも低濃度を示した.MRIではT1低信号,T2高信号を示した.腫瘍内部を血管が貫通するpenetrating patternが見られた.肝生検で,diffuse large B cell lymphoma(DLBCL)と診断した.
症例2:50歳代男性,発熱と背部痛を契機に発見された.AST 71IU/l, ALT 42IU/l, LDH 2171IU/l, ALP 522IU/l,γ-GTP 90IU/l,可溶性IL-2レセプター3640U/ml, HCV genotype 1b HCVRNA 5.7 LogIU/ml.Bモードでは,数mm〜30mm程度の多発する低エコー腫瘤を示し,造影では均一濃染パターンを示した.CTでは肝実質より低濃度であり,造影のいずれの相でも低濃度を示した.肝生検で,B cell由来のBurkitt lymphomaと診断した.
症例3:60歳代男性,発熱と全身の痛みを契機に発見された.AST 57IU/l, ALT 58IU/l, LDH 997IU/l,ALP 419IU/l,γ-GTP 113IU/l,可溶性IL-2レセプター792U/ml, HCV抗体陰性.Bモードでは肝内結節は,10mm〜50mm大の無〜低エコー小結節と,厚いhaloを有する内部構造不均一な大結節に,大別された.造影上ともに均一濃染パターンを示した.CTでは肝実質より低濃度であり,造影のいずれの相でも低濃度を示した.肝生検で,DLBCLと診断した.
症例1では肝臓以外に病変は認めなく,肝原発と考えられた.症例2,3では,ともに脾内に多数の結節を認めるがリンパ節腫大は認めなかった.
【考察】
画像所見は,Bモードで低エコー,造影で早期濃染パターンを示し,既存の脈管が腫瘍内部を偏移無く貫通する所見を認めた.悪性リンパ腫の特徴的な造影パターンと考えられ,診断の一助になり得た.
悪性リンパ腫の原因としては,EBウイルス,ヘリコバクターピロリ菌,C型肝炎ウイルス感染など報告されている.3例中2例で,C型肝炎ウイルスの関与が認められた.C型肝炎は多彩な肝外病変を有し,特にクリオグロブリン血症,膜性増殖性糸球体腎炎,シェーグレン症候群,悪性リンパ腫,晩発性皮膚ポルフィリン症,多発性筋炎,扁平苔癬,糖尿病などの合併がよく知られている.肝炎ウイルスによる慢性刺激が多段階的にB細胞のモノクローナルな増殖を誘起し,悪性リンパ腫の発症につながると推察されている.肝炎治療は進歩しているが,高齢化も有り罹病期間が長く,今後症例が増加してくる可能性がある.肝細胞癌の鑑別診断として注意する必要がある.