Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 0.966(2018年)→0.898(2019年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般口演
消化器 肝:症例①

(S634)

肝腫瘍周辺の肝内静脈-静脈短絡の2例

Intrahepatic veno-venous shunts around liver tumor

佐藤 裕人1, 鈴木 克典1, 佐藤 純子2, 赤塚 れい子2, 伊藤 千代子2, 門間 美穂2, 大山 葉子3, 長沼 裕子4, 石田 秀明5

Hiroto SATO1, Katsunori SUZUKI1, Junko SATO2, Reiko AKATSUKA2, Chiyoko ITO2, Miho MOMMA2, Youko OOYAMA3, Hiroko NAGANUMA4, Hideaki ISHIDA5

1山形県立中央病院消化器内科, 2山形県立中央病院中央検査部, 3秋田組合総合病院臨床検査科, 4市立横手病院消化器内科, 5秋田赤十字病院消化器内科

1Department of Gastroenterology, Yamagata Prefectural Central Hospital, 2Department of Medical Laboratory, Yamagata Prefectural Central Hospital, 3Department of Medical Laboratory, Akita Kumiai General Hospital, 4Department of Gastroenterology, Yokote Municipal Hospital, 5Department of Gastroenterology, Akita Red Cross Hospital

キーワード :

【はじめに】
肝内静脈-静脈(veno-venous,以下,V-V)短絡は以前から知られている短絡路であるが,その報告の多くはBudd-Chiari syndrome,などの下大静脈閉塞例であり,肝腫瘍に伴うV-V短絡例の報告は極めてまれである.今回我々はそのような2例を経験したので報告する.
【方法】
使用診断装置:東芝社製:Aplio XG, 500(中心周波数:3−4MHz).造影法の手順は,ソナゾイド®(GE Health Care社)を用い,通常の,肝腫瘍の造影方法に準じた.
【症例】
症例1:80歳代男性:原因不明の原発性肝細胞癌例.全身倦怠を主訴に受診.AST 116IU/l, ALT 68IU/l, ALP 999IU/l,γ-GTP 977IU/l, T-Bil 0.9mg/dl, Alb 3.7g/dl,HBs抗原陰性,HCV抗体陰性,AFP 256ng/ml,Child-pugh分類A.超音波とCTで肝S8を中心に15cm大の巨大な肝細胞癌を認めた.その時点で,多発小転移巣をみとめTACEを施行した.超音波上,S8の主病巣周囲に多数の微細管腔構造を認めた.これらはカラードプラ,及びSMI(Superb microvascular imaging)で右肝静脈と中肝静脈の分枝間の微細交通枝と確認できた.小肝内転移巣周囲にはこの所見はみられなかった.なお,他の短絡枝(動脈-門脈,門脈-静脈,など)はみられなかった.なお,これらのV-V短絡は腫瘍辺縁に僅かにみられるものではなくS5-8にかけて広く分布していた.現在2度目のTACEを行い生存中である.
症例2:70歳代女性:大腸癌の多発肝転移例.全身状態不良で肝機能障害も加わっている.S5の約5cm大の主病巣周囲に多数の微細管腔構造を認めた.本例でも,これらはカラードプラ,及びSMで中肝静脈の分枝間の微細交通枝と確認できた.本例でも,a),この短絡枝がみられたのはS5領域のみで,その分布はS5全体に及んでいた,かつ,b)他の短絡枝は認められなかった.
【考察】
今回の2例の,肝腫瘍近傍の肝内V-V短絡例においては,共通点として,a)肝右葉の比較的大きな主病巣周囲に多数のV-V短絡がみられたこと,b)V-V短絡発生箇所は一箇所で,他の病巣周囲にはみられなかったこと,c)他の短絡枝(動脈-門脈,門脈-静脈,など)はみられなかったこと,が挙げられる.通常肝腫瘍では高率に腫瘍辺縁に微細動脈-門脈(A-P)短絡が生ずる事が知られているが,それに比してV-V短絡がみられることはまれである.肝腫瘍にみられるA-P短絡と異なり,この2例ではV-V短絡が腫瘍から少し離れた位置まで広く分布しており,短絡の形成機序を考える上で示唆に富む症例と考え報告した.