Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般口演
消化器 その他:症例

(S622)

胸水例の超音波所見の再検討

Re-evaluation of sonograms of right pleural effusion

山中 有美子1, 石田 秀明1, 渡部 多佳子1, 小松田 智也1, 八木澤 仁1, 宮内 孝治2, 長沼 裕子3, 大山 葉子4, 長井 裕5, 小川 眞広6

Yumiko YAMANAKA1, Hideaki ISHIDA1, Takako WATANABE1, Tomoya KOMATSUDA1, Hitoshi YAGISAWA1, Takaharu MIYAUCHI2, Hiroko NAGANUMA3, Youko OOYAMA4, Hiroshi NAGAI5, Masahiro OGAWA6

1秋田赤十字病院超音波センター, 2秋田赤十字病院放射線科, 3市立横手病院内科, 4秋田厚生医療センター臨床検査科, 5NGI研究所, 6日本大学病院消化器内科

1Department of Diagonistic Ultrasound, Akita Red Cross Hospital, 2Department of Radiology, Akita Red Cross Hospital, 3Department of Internal Medicine, Yokote Municipal Hospital, 4Department of Laboratory, Akita Kousei Medical Center, 5NGI Laboratory, 6Department of Gastroenterology, Nihon University School of Medicine

キーワード :

【目的】
超音波検査の主目的の一つに,腹水,胸水のひろいあげがある.これは,超音波の特性として,水は原則的に内部に散乱や反射源,となるものが無いことによる.また,周囲軟部組織-水間の音響インピーダンス差が大きく,両者の境界における反射が,(通常の)軟部組織-軟部組織間の反射に比して大きいこと,が挙げられる.このような理由で,胸水の拾い上げは超音波検査が有効であるが,胸水の超音波所見に関しては余り掘り下げた検討がなされてこなかった.今回我々は,胸水例の超音波所見を再検討し若干の知見を得たので報告する.
使用診断装置:東芝社製:AplioXG, 500. GE社:LOGIQE9,日立アロカ社製:Ascendus, Preilus, Prosound F75.
【対象と方法】
対象は,過去1年にCT検査と超音波検査で右胸水(+)と診断された40例(男性21女性19)で,その超音波所見に関し,動画と静止画を再検討した.なお,走査面は右肋間断面を基本とした.
【結果】
a)40例中33例(73%)では横隔膜背側に肝の鏡像が部分的に出現し静止画の診断上画像の解釈に若干苦慮した.この場合,動画では肝の鏡像が呼吸とともに移動するカーテンを開け閉めする様な現象がみられ診断上横隔膜背側にみられるものが肝の鏡像であることが確信できた(以下,Curtain effect(+)b)40例中2例(5%)では胸水が微細点状エコーで占められ一見充実性腫瘍様に表現された.この場合も静止画では診断に不安を残したが動画では点状エコーの移動から,胸水と認識する事が容易であった.なお,この2例では右肋間で胸水を観察した際,肝背部の胸水内部の点状エコーが不明瞭となり,この所見も診断上の注意点と思われた.
【考察】
従来容易と考えられていた胸水の超音波診断にも,再検討すると,種々の問題があることが分かった.その一つが感染や腫瘍に起因する内部点状エコーで,静止画のみでは一見充実性腫瘍様に表現されるため静止画のみでは誤診する可能性がある.この場合動画による点状エコーの移動を確認する事が誤診予防の上でも必要と思われた.もう一つが肝の鏡像の存在で,健常人にみられる綺麗な鏡像と異なり,胸水の実像と肝の鏡像が混在し,その混在の比率が呼吸により変動するため,やはり静止画のみでは診断が困難であったが動画では肝の鏡像が呼吸とともに移動するカーテンを開け閉めする様な現象がみられ診断に苦慮することはなかった.今回の再検討で,胸水を超音波で観察するときには動画の記録が肝要と思われ,特に,肝の鏡像が呼吸とともに移動する現象(Curtain effect)を活用すべきと思われた.