Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般口演
消化器 肝線維化②

(S614)

耐糖能低下が肝臓に与える肝線維化への影響についての検討

Relationship between hepatic fibrosis with diabetes of abdominal ultrasonography

小宮山 恭弘1, 2, 脇 英彦1, 上田 真喜子1, 羽生 大記2, 藤田 幸二3, 池田 桂子3, 高橋 未和3, 塚本 美紀子3, 森 敬弘5, 大見 甫4

Yasuhiro KOMIYAMA1, 2, Hidehiko WAKI1, Makiko UEDA1, Daiki HABU2, Kouji FUJITA3, Keiko IKEDA3, Miwa TAKAHAHI3, Mikiko TSUKAMOTO3, Takahiro MORI5, Hajime OHMI4

1森ノ宮医療大学臨床検査学科, 2大阪市立大学大学院生活科学研究科栄養医科学, 3大阪鉄道病院画像診断センター生理機能検査部門, 4南海電鉄健康管理センター, 5中之島クリニック健康管理センター

1Department of Medical Tecnology, Morinomiya University, 2Graduate School of Human Life Science, Osaka City University, 3Imagingcenter, Osaka Railway Hospital, 4Helth Care Center, Nankai Railway, 5Helth Care Center, Nakanoshima Clinic

キーワード :

【はじめに】
脂肪肝からNASHへの進行において,耐糖能異常が大きな要因となるが,腹部エコーなどの通常ルーチンでは,肝線維化の評価が行われていない.肝線維化の血液マーカーにはヒアルロン酸やⅣ型コラーゲン7Sなどがあるが,肝実質の弾性度の指標となるFibro scanと相関の高い指標としてFib4indexがある.Fib4indexはASTとALT血小板の値と年齢から計算でき,人間ドックなどのスクリーニングに取り入れやすい.
東芝メディカル社から新たに肝線維化の指標として発売されたShear waveは,到達時間等高線表示により,測定ポイントの良否を確認しながら測定可能で,簡便に再現性の高い測定が可能である.今回我々は,Shear waveによる肝実質のせん弾波伝搬速度とFib4index,エコー輝度について計測し,人間ドックと糖尿病患者を比較し,耐糖能低下が肝臓に与える脂肪化と肝線維化への影響について検討を行ったので報告する.
【対象と方法】
対象は人間ドック39名と2型糖尿病患者50名.BMI,腹部周囲径,血圧と,肝機能及び脂質,耐糖能とFib4indexの血液検査結果,エコーでの肝臓,肝腎差,膵臓,膵脾差の輝度測定と,肝硬度の指標として,Shear waveを測定した.肝実質のせん弾伝搬速度の計測は,Shear waveの2重測定を行い平均値を求めた.ドックと糖尿患者でのFib4inde,Shear waveデータの比較はT検定を行い,Shear waveと各々の因子について相関は,Spearmanの順位相関係数を用いて解析した.
【結果】
人間ドックと糖尿病患者のBMI,腹部周囲径,血圧に有意差は見られなかった.
血液データ比較では,AST,Glu,HbA1c,Fib4indexがそれぞれ糖尿病患者で有意に高値であった.エコー輝度では,肝輝度,膵輝度,膵脾差が糖尿病患者で有意に高値であった.
Shear waveと各因子の相関では,BMI r=0.590(p<0.01)),腹部周囲径r=0.424(p<0.01))で相関が見られた.また収縮期血圧r=0.273(p<0.05)と弱い相関が見られた.また血液検査データとの比較では,Glu r=0.504(p<0.01)),HbA1c r=0.383(p<0.01))と相関が見られた.また中性脂肪r=0.232(p<0.05))Fib4index r=0.247(p<0.05))と弱い相関関係が見られた.
【考察】
脂肪肝からNASHへの進行には,肝臓の脂肪蓄積によるインスリン抵抗性を基盤とした種々の代謝異常が大きく関与している.その過程で肝組織の慢性炎症と線維化の進展が進む.従来エコーなどの画像診断のみでは,このような慢性炎症の程度や線維化の程度を定量的に把握することが困難であったが,技術の進歩により簡便な方法で線維化を測定することが可能になってきた.2型糖尿病患者では,ドック対象に比べエコー上の肝臓,膵臓の輝度が高く,血液検査では,Fib4indexが高値でありShear waveで測定した肝線維度と耐糖能低下の間には高い相関関係が見られた.
【結語】
糖尿病患者では,肝輝度ともに膵輝度上昇も見られており,異所性脂肪蓄積が進んでいることがわかった.耐糖能低下を示し将来NASHへ進行する可能性の高い,病的脂肪肝における要経過観察群の囲い込みに,エコーによる膵輝度測定並びに,Shear wave測定とFib4indexの測定の組み合わせによる肝線維化スクリーニング検査は有用であると考えられた.