Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般口演
消化器 肝線維化①

(S612)

C型慢性肝疾患に対する抗ウィルス療法によるVTQの相違

Virtual Touch Tissue Quantification during anti-viral therapy for chronic liver disease related to HCV

高畠 弘行1, 守本 洋一1, 友國 淳子2, 佐原 朗子2, 水野 元夫1, 山本 博1

Hiroyuki TAKABATAKE1, Yoichi MORIMOTO1, Junko TOMOKUNI2, Akiko SAHARA2, Motoo MIZUNO1, Hiroshi YAMAMOTO1

1公益財団法人大原記念倉敷中央医療機構倉敷中央病院消化器内科, 2公益財団法人大原記念倉敷中央医療機構倉敷中央病院医療技術部臨床検査技術部

1Department of Gastroenterology and Hepatology, Kurashiki Centaral Hospital, 2Department of Laboratory Medicine, Kurashiki Centaral Hospital

キーワード :

【目的】
近年,超音波診断装置を用いた非侵襲的な肝線維化評価について検討が進められ,その有用性が認められている.我々はこれまでもVirtual Touch Tissue Quantification(VTQ)の肝線維化評価などにおける有用性を報告してきた.C型慢性肝疾患診療に対するインターフェロン治療における肝線維化やVTQなど超音波機器を用いたelastographyの有用性については今までも多数の報告があるが,2014年から使用可能となった直接作用型抗ウィルス薬(DAAs)によるインターフェロンフリー治療におけるVTQの推移については報告が少ない.今回我々はインターフェロン治療中ならびにDAAsによるインターフェロンフリー治療におけるVTQの推移を比較検討した.
【方法】
当院でC型慢性肝疾患に対し2011年以降にインターフェロン治療を行った81例(男性51例女性30例56.3±12.4歳,IFN群)とアスナプレビル・ダクラタスビル併用療法を行った109例(男性48名女性61名,平均年齢69.5±8.1歳,DAAs群)についてその臨床経過とVTQによるせん断波速度(Vs値)の推移を比較検討した.また,治療前に肝生検を行い同時にVs値の測定を行いえた55例については組織学的線維化とVs値の比較検討を行った.
使用機種はシーメンス社製ACUSON S2000を用い,肝右葉ならびに脾に測定域(ROI)を設定し,それぞれ10回測定,その平均と標準偏差を求めた.成績;治療前の線維化とVs値の検討ではF1; 1.35±0.47m/s,F2; 1.695±0.56m/s,F3; 2.051±0.62m/s,F4; 2.575±0.57m/sと線維化の進行とともにVs値も高値を示し,F1とF3,F1とF4およびF2とF4の間に有意差を認めた.IFN群では開始時ALT87.4±108.2IU/L,PLT15.6万±4.8万で,81例中54例(66.7%)がSVRを達成し,治療前Vs値1.743±0.64m/sは治療後に1.558±0.58m/sと有意に低下した.また,IFN群中治療前にVTQ値を測定しえた63例中SVR群(48例)では1.745±0.64m/sであったのに対しnon-SVR群(15例)では1.96±0.73m/sと有意差は認めなかったがnon-SVR群で高値を示す傾向があった.DAAs群では開始時ALT45.8±32.7IU/L,PLT14.9万±6.1万で,ウィルス学的な治療効果をSVR4(n=84)94.0%,SVR12(n=61)90.2%,SVR24(n=22)72.7%に認め,SVR4達成症例の内経過の追えた29例での治療前Vs値2.135±0.87m/sが治療後に2.171±0.82m/sへ低下傾向を示すも有意差は認めなかった.
【考案】
VTQを用いたC型肝炎に対する抗ウィルス療法の経過観察を試みた.Vs値と肝線維化(F因子)に有意な相関が観察された.IFN群では有意なVs値の低下を認めたが,DAAs群では低下傾向は示されるもののVs値に有意な低下は認められなかった.抗ウィルス療法による違いのほかに,IFN群は24週から72週という治療期間であったのに対し,DAAs群では24週と治療期間が短くこのため観察間隔が短かった可能性があることや,平均年齢の違い,治療開始前Vs値がDAAs群でより高値であったことなどが考えられる.治療の行いやすさから,DAAs群はより高齢で線維化進行例も治療対象となるため,元々発癌riskの高い症例が多いが,抗ウィルス機序の違いによりVs値低下が少ない可能性も否定できないため,今後さらに治療後のVs値の推移や症例数を増やしての検討を行い,SVR後の発癌の有無を含めた慎重な経過観察が必要であると考えられた.