Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般口演
循環器 他臓器疾患と心機能

(S605)

腎移植術後の心リモデリング改善例の臨床的特徴

Clinical Characteristics of Cardiac Responder after Renal Transplantation

飯野 貴子, 渡邊 博之, 新保 麻衣, 佐藤 和奏, 伊藤 宏

Takako IINO, Hiroyuki WATANABE, Mai SHIMBO, Wakana SATO, Hiroshi ITO

秋田大学大学院医学系研究科循環器内科学・呼吸器内科学

Department of Cardiovascular and Respiratory Medicine, Akita University Graduate School of Medicine

キーワード :

【背景】
末期腎不全患者において,左室肥大,左室拡大などの心リモデリング,左室収縮・拡張機能障害を背景として,心不全,心臓関連死が引き起こされることが知られている.末期腎不全の治療法には透析と腎移植術が挙げられる.腎移植術を受けた患者において左室肥大が改善する,すなわち,左室リバースリモデリングが得られることが報告されている.しかし,リバースリモデリングが得られる症例が存在する一方で,腎移植術後も左室肥大が残存する症例が認められる.
【目的】
腎移植術後に左室リバースリモデリングが得られた症例の臨床的特徴を解明すること.
【方法】
当院で腎移植術を施行された33症例を対象とし,術前,術後1ヶ月,6ヶ月,12ヶ月の時点で,心エコー検査を含む心機能評価を行った.左室リバースリモデリングが得られた症例(responder)は,腎移植術後に左室心筋重量係数が術前と比して20%以上減少した例とした.
【結果】
全33例のうち22例(67%)がresponderであった(responder群22例,non- responder群11例).Responder群では,腎移植術前と比較し,術後12ヶ月の時点で有意に左室心筋重量係数(170±10 vs. 122±5.5 g/m2,腎移植術前 vs.術後12ヶ月,p<0.001),左室拡張末期容積(130±6.6 vs. 103±7.3 ml,腎移植術前 vs.術後12ヶ月,p<0.01)が低下した.さらにresponder群では,腎移植術後,左室駆出率が経時的に改善した(58±11 vs. 69±2%,腎移植術前 vs.術後12ヶ月,p<0.01).一方,non-responder群では,左室心筋重量係数,左室拡張末期容積,左室駆出率ともに,腎移植術後,術前に比して有意な変化はみられなかった.2群間で比較すると,responder群において腎移植術前の左室駆出率は有意に低値であった(58.0±11 vs. 71.1±4.1%,responder群 vs.non- responder群,p<0.01).それ以外の腎移植術前の患者背景,心エコー指標は,responder群,non- responder群で有意差を認めなかった.しかし,responder群においては,腎移植術後の家庭血圧がnon-responder群と比較して低値であった(腎移植術12か月後の家庭血圧:116±4 vs. 140±2 mmHg,responder群 vs.non- responder群,p<0.01).
【結語】
腎移植術後,左室リバースリモデリングが得られた症例は,腎移植術前の左室駆出率が低値の症例,腎移植術後の家庭血圧のコントロールが良好な症例であった.