Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般口演
循環器 症例報告③

(S595)

遺伝性出血性毛細血管拡張症に合併した壁性心内膜炎の一例

A case of heredity hemorrhagic telangiectasia complicated by left ventricular mural endocarditis

新保 麻衣, 佐藤 和奏, 渡部 久美子, 飯野 貴子, 渡邊 博之, 伊藤 宏

Mai SHIMBO, Wakana SATO, Kumiko WATANABE, Takako IINO, Hiroyuki WATANABE, Hiroshi ITO

秋田大学大学院医学系研究科循環器内科学

Department of Cardiovascular Medicine, Akita University Graduate School of Medicine

キーワード :

【はじめに】
遺伝性出血性毛細血管拡張症(HHT)は,5000-10000人に1人の発症頻度で,その約30%に肺動静脈奇形(pAVM)を合併する.pAVMは奇異性塞栓からの続発性脳膿瘍の原因となり得ることが知られている.
【症例】
50代男性
【既往】
HHT,pAVM,肛門周囲膿瘍
【現病歴】
発熱,易疲労感あり近医受診.血液検査上肝酵素上昇,炎症反応高値を認めた.全身CTにてpAVM,脳膿瘍,肝膿瘍に加え,左室内腔に小腫瘤が確認されたため当科へ紹介,入院となった.
【経過】
心臓超音波検査(UCG)を施行したところ,左室収縮能は保たれており重度の弁膜症も認めなかったが,後乳頭筋に付着する可動性のある10 mm弱の腫瘤が確認され,心筋腫瘍が疑われた.血液培養からはメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)が検出され,脳膿瘍,肝膿瘍にたいし抗生剤治療を開始.頭部MRIでは脳膿瘍の縮小を認め,炎症反応が低下したところでpAVMに対してコイル塞栓術を施行した.しかし,その後再度炎症反応の上昇がみられ,UCG再検したところ,後乳頭筋に付着していた腫瘤が約1週間で20 mm長にまで急速に増大しているのが確認された.塞栓症の危険性が高いと判断し,後乳頭筋腫瘤切除,僧房弁置換術を行った.術中所見では,腫瘤UCG所見に一致して後乳頭筋に連続していたが,その内容物は膿様であった.病理所見では,白血球が多数確認され,摘出された内容物の培養からMRSAも検出され,心筋内膿瘍,壁性感染性心膜炎と診断した.術後経過は良好であり,独歩退院となった.
【考察】
pAVMをもったHHTに心腔筋内膿瘍,壁性感染性心内膜炎を併発した報告はこれまでにない.本症例では,pAVMにより肺血管床のフィルター機能が低下している状況下で菌血症が発症し,経冠動脈的に血液伝播,心筋膿瘍を発症したものと考えられる.また,短期間で後乳頭筋腫瘤が増大しており,その機序として後乳頭筋内に貯留した膿が周囲の心筋が収縮するために,心腔内に押し出されたと推測される.