Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般口演
循環器 心機能評価①

(S578)

左室拡弛緩能に対する後負荷の影響には性差がある

Gender Difference in Relationships between Left Ventricular Diastolic Dysfunction and Afterload

反町 秀美1, 根岸 一明2, 黒沢 幸嗣1, 吉田 くに子1, 小保方 優1, 丹下 正一3, 倉林 正彦1

Hidemi SORIMACHI1, Kazuaki NEGISHI2, Koji KUROSAWA1, Kuniko YOSHIDA1, Masaru OBOKATA1, Shoichi TANGE3, Masahiko KURABAYASHI1

1群馬大学医学部附属病院循環器内科, 2タスマニア大学メンジーズ医学研究所タスマニア大学, 3前橋赤十字病院心臓血管内科

1Cardiovascular Medicine, Department of Gunma University Graduate School of Medicine, 2Menzies Institute for Medical Research, University of Tasmania, 3Cardiovascular Medicine, Maebashi Red Cross Hospital

キーワード :

【背景】
女性は左室駆出率の保たれた心不全(HFpEF)のリスクである.動脈硬化の進行により脈波伝播速度(PWV: pulse wave velocity)が増加し,末梢から心臓への反射波がより速くなるため血圧上昇や脈圧の増加をきたし,左室弛緩能の悪化に寄与することが報告されている.女性は男性よりも大動脈長が短く,反射波の影響を受けやすい.このため女性では後負荷や動脈硬化が左室弛緩能に与える影響が大きく,体格差で補正後も性差があるとされる.しかし,より正確な指標である大動脈長で補正したものはほとんどない.
【目的】
大動脈長で補正後も左室弛緩能に対する後負荷の影響に性差が存在するかを検討すること.
【方法】
同時期に経胸壁心エコー図検査,血圧脈波速度計測(baPWV),胸腹部CT検査を施行した84例(年齢:69±11歳,女性:33例,左室駆出率≧45%)を対象とした.心房細動,末梢動脈疾患,中等度以上の弁膜症患者は除外した.体格の指標としてCTで計測した大動脈長を用い,左室弛緩能の指標には拡張早期僧帽弁輪移動速度(Em)を用いた.Emと年齢,後負荷指標(収縮期血圧(sBP),脈圧(PP), baPWV)との関係を男女別に評価した.さらに大動脈長で補正した後もこれらの関係に性差があるかを検討した.
【結果】
CTで計測した大動脈長は女性の方が男性よりも有意に短かった(男性:48.5±3.8cm,女性:44.2±3.0cm, p<0.01).女性では,加齢に伴いEmは有意に低下したが(r=-0.40, p=0.03),男性では加齢の影響を認めず(r=-0.27, p=0.07),有意な性差があった(p=0.002).また女性のみで後荷指標とEmの間には有意な負の相関を認めた(sBP;r=-0.37, p=0.04, baPWV;r=-0.39, p=0.03).重回帰分析を施行したところ,sBPとPP,baPWVは女性においてのみ,Ln(Em)の独立した規定因子であった.また,EmとsBPとの関係には有意な男女の交互作用を認め,大動脈長で補正した後も同様であった(Table).
【結論】
大動脈長で補正後も女性は男性より加齢や後負荷が左室弛緩能に与える影響が大きい.HFpEF発症リスクの性差には体格差以外の要因が関与していることが示唆された.