Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 0.966(2018年)→0.898(2019年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般口演
循環器 心機能評価①

(S578)

左室弛緩能と充満圧の予測精度:組織ドプラ単一定量指標と複数指標の総合評価の比較

Accuracy of the Estimation of Left Ventricular Relaxation and Filling Pressure: A Comparison of Single Doppler Parameters and Comprehensive Evaluation

中鉢 雅大1, 山田 聡2, 林 大知2, 岩野 弘幸2, 山田 博胤3, 土肥 薫4, 瀬尾 由広5, 大手 信之6, 清水 力1, 筒井 裕之2

Masahiro NAKABACHI1, Satoshi YAMADA2, Taichi HAYASHI2, Hiroyuki IWANO2, Hirotsugu YAMADA3, Kaoru DOHI4, Yoshihiro SEO5, Nobuyuki OHTE6, Chikara SHIMIZU1, Hiroyuki TSUTSUI2

1北海道大学病院検査・輸血部, 2北海道大学大学院循環病態内科学, 3徳島大学病院循環器内科, 4三重大学大学院循環器・腎臓内科学, 5筑波大学循環器内科, 6名古屋市立大学大学院心臓・腎高血圧内科学

1Division of Laboratory and Transfusion Medicine, Hokkaido University Hospital, 2Department of Cardiovascular Medicine, Hokkaido University Graduate School of Medicine, 3Department of Cardiovascular Medicine, Tokushima University Hospital, 4Department of Cardiology and Nephrology, Mie University Graduate School of Medicine, 5Cardiovascular Division, University of Tsukuba, 6Department of Cardio-Renal Medicine and Hypertension, Nagoya City University

キーワード :

【目的】
日常の心エコー検査で,個々の左室拡張機能指標が実際の左室弛緩能や充満圧を反映しているか否かに疑問を感じることが少なくない.そこで,(1)拡張早期僧帽弁輪運動速度(e’)や左室流入血流拡張早期波高(E)とe’の比(E/e’)単独での評価,(2)Eと左室流入血流心房収縮期波高の比(E/A)とE/e’を用いたパターン評価,(3)複数の心エコー指標に基づく心エコー専門家の総合評価の間で,左室弛緩能と充満圧の推定精度を比較した.
【方法】
全国5施設で種々の心疾患を有する77例を登録した.左室の圧下行脚時定数(τ)と平均拡張期圧(MDP)を計測し,τ>48 msを左室弛緩障害,MDP>15 mmHgを充満圧上昇と定義した.左室流入血流の各指標,肺静脈血流の各指標,カラーMモード法による流入血流伝播速度に関する指標とe’,E/e’を計測した.次に,(1)弛緩障害,充満圧上昇の予測のための各定量指標の閾値を相対累積度数分布法を用いて求めた.(2)パターン評価は,0.75≦E/A<1.5かつE/e’<10を正常型,E/A<0.75を弛緩障害型,0.75≦E/A<1.5かつE/e’≧10を偽正常型,E/A≧1.5を拘束型とし,弛緩障害型+偽正常型+拘束型を弛緩障害,偽正常型+拘束型を充満圧上昇と判定した.(3)総合評価は,年齢,性別,合併症,左室局所壁運動と25の心エコー指標に基づき,侵襲的検査の結果を知り得ない心エコー専門家が判定した.
【結果】
τとe’の相関はr=-0.32(p<0.01),MDPとE/e’の相関はr=0.50(p<0.001)といずれも良好ではなかった.3つの評価法の診断精度を表に示す.弛緩障害推定の一致率(κ係数)は,パターン評価が0.20と低く,総合評価は0.48と中等度であった.充満圧上昇推定の一致率は,パターン評価が0.40と低く,総合評価は0.58と中等度であった.
【考察】
弛緩障害の予測精度は,e’単独よりもパターン評価が,さらに複数指標に基づく総合評価が優れていた.E/e’単独による充満圧上昇の予測は,感度はよいが陽性適中率が低く,これはE/e’が高値でも充満圧が高くない症例が多いためであった.一方,総合評価は,陽性適中率や正診率が他の2つの評価法に比べ高かった.
【結論】
左室弛緩障害と充満圧上昇の予測において,単一の定量指標よりも簡便なパターン評価が,さらにこれらよりも複数指標に基づく総合評価が優れていた.