Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般口演
循環器 症例報告①

(S574)

淡明細胞肉腫術後に心筋内腫瘤を認めた一例

A case of cardiac tumur detected by echocardiography after resection of clear cell sarcoma

井上 良子1, 穂積 健之2, 中塚 賢一1, 脇西 優子1, 湯峯 奈都子2, 瀧口 良重1, 竹本 和司2, 三木田 直哉3, 塩野 泰紹2, 赤阪 隆史2

Ryoko INOUE1, Takeshi HODUMI2, Kenichi NAKATSUKA1, Yuko WAKINISHI1, Natsuko YUMINE2, Yoshie TAKIGUCHI1, Kazushi TAKEMOTO2, Naoya MIKITA3, Yasutsugu SHIONO2, Takashi AKASAKA2

1和歌山県立医科大学附属病院中央検査部, 2和歌山県立医科大学循環器内科, 3和歌山県立医科大学皮膚科学

1Central Laboratory, Wakayama Medical University Hospital, 2Cardiovascular Medicine, Wakayama Medical University, 3Dermatology, Wakayama Medical University

キーワード :

【症例】
40歳代,男性
【現病歴】
10年ほど前から徐々に増大する右踵部腫瘤を認め,疼痛が出現してきたため,当院皮膚科を紹介受診となった.精査にて,淡明細胞肉腫と診断され,切除術が施行された.術後6か月後に,PET−CT検査にて多発皮下・筋肉内に転移が疑われ,化学療法が開始され,縮小傾向にあった.術後1年10か月後に,フォローのCT検査にて病変の増大を認めたため,化学療法の薬剤変更前の心機能評価目的に心エコー図が依頼された.
【既往歴・家族歴】
特記すべき事項なし
【心電図】
PQ短縮,V1〜V3でST上昇を認めるが,以前の心電図と著変ない所見であった.
【胸部X線写真】
心拡大,うっ血,胸水貯留などの所見は認めなかった.
【心エコー図】
化学療法薬剤変更前の心エコー図では,左室収縮能は良好で,有意な弁膜症も認めなかった.左室の拡大は認めなかったが,右室側に少量の心嚢液を認めた.傍胸骨長軸像で右室前壁と左室後壁の基部に低エコーな腫瘤様エコー領域を認め,短軸像では左室乳頭筋レベルで右室心筋内に,腱索レベルで左室後壁心筋内に腫瘤様エコーを認めた.
その後,化学療法の薬剤を変更し,化学療法が実施され,経時的に心エコー図のフォローが施行されていた.薬剤変更後4か月後の心エコー図では,右室前壁の腫瘤様エコーはあまり変化を認めなかったが,左室後壁心筋内のものは短軸像で薬剤変更前と比較すると,腫瘤様エコーの辺縁が不明瞭になっていた.しかし,短軸像で心室中隔下部〜下壁のあたりの心筋内に新たに低エコー領域を認め,心嚢液はやや増加していた.薬剤変更後6か月後には全周性に心嚢液の著明な増加を認め,心タンポナーデの診断で入院となった.
【経過】
入院後,心嚢液ドレナージが施行され,淡血性の心嚢液約1330mlが排液された.心嚢液の細胞診検査の結果,class Vの悪性腫瘍であり,淡明細胞肉腫として矛盾しない所見が得られ,淡明細胞肉腫の心臓転移と考えられた.
【結語】
淡明細胞肉腫の心臓転移と考えられる心筋内腫瘤を心エコー図にて観察した一例を経験したので報告する.