Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般口演
工学基礎 組織弾性・性状評価

(S547)

マルチレイリーモデルを用いた肝炎における線維組織画像化手法の実験的検討

Experimental evaluation of imaging method of fibrotic tissue using Multi-Rayleigh model

大橋 穰, 平田 慎之介, 蜂屋 弘之

Minori OHASHI, Shinnosuke HIRATA, Hiroyuki HACHIYA

東京工業大学大学院理工学研究科

Graduate School of Science and Engineering, Tokyo Institute of Technology

キーワード :

【目的】
我々はこれまで病変肝の振幅分布が,異なる組織を表す複数のレイリー分布を組み合わせたマルチレイリーモデルで表現できることを示してきた[1].マルチレイリーモデルを用いることで線維組織の構造を確率画像として定量化することができる[2].
本報告では構造が既知であるファントムを用いて線維組織の画像化手法の定量化精度について検討した結果について示す.
【方法】
三つの異なる輝度部位を持つファントムを作成して実験を行った.ファントムは寒天溶液に散乱体としてタルクを加えて固めたもので,輝度によって加えるタルクの量を変えてある.作成したファントムの低輝度部位と高輝度部位を含まない,中輝度部位のみの部分のBモード画像をFig. 1(i)に,低輝度部位と高輝度部位を含む部分のBモード画像をFig. 1(ii)に示す.Bモード画像中の低輝度部位で結節内部などの低エコー組織を,中輝度部位で肝実質を,高輝度部位で線維組織の輝度を模擬している.取得したBモード画像の振幅分布を,マルチレイリーモデルによって各成分の振幅分布の和で表現する.評価された振幅分布より,Bモード画像は線維組織である確率画像へと変換することができる.
【結果】
Fig. 2(i)に中輝度部位のみのBモード画像から算出した線維確率画像を,Fig. 2(ii)に高輝度部位と低輝度部位を含む部位からのBモード画像から算出した線維確率画像を示す.Fig. 2(i)から,線維を模擬した高輝度部位を含まない場合では線維確率がほとんど0になっていることがわかる.これはマルチレイリーモデルにおいて,高輝度部位を含んでいないため線維混在率が低く推定されているためであり,通常のしきい値処理と大きく異なる点である.
Fig.2(ii)から,高輝度部位では線維確率が高くなっていることがわかる.Fig.2(ii)では中輝度部位においても一定の線維確率が生じている.これはスペックルという確率変動を含む干渉画像の性質を示している.しかし,線維部分に比べ確率は小さく正しい評価が行われている.マルチレイリーモデルを用いることで線維組織構造を確率画像として定量化できることが実験的に示された.
【参考文献】
[1]Y. Igarashi, T. Yamaguchi, H. Hachiya, J.Appl. Phys., 50,07HF17(2011)
[2]T. Higuchi, S. Hirata, T. Yamaguchi, H. Hachiya, Jpn. J. Appl. Phys., 52,07HF19,(2013)