山崎 真有子¹, 中島 崇仁², 笠原 世裕¹, 増子 勝郎¹, 山越 芳樹¹

Mayuko YAMAZAKI¹, Takahito NAKAJIMA², Toshihiro KASAHARA¹, Katsurou MASUKO¹, Yoshiki YAMAKOSHI¹

¹群馬大学大学院理工学府, ²群馬大学大学院医学系研究科

¹Graduate School of Science and Technology, Gunma University, ²Graduate School of Medicine, Gunma University

キーワード :

【目的】
我々は，超音波カラーフロー画像（CFI）の流速推定アルゴリズムをせん断波の波面検出に使用することで，汎用の超音波映像装置を使い実時間で画像化できる，簡便さと定量性を兼ね備えた新たなせん断波の実時間映像法（Color Doppler shear wave imaging: CD SWI）を報告した^［1］．本稿ではCD SWI法を用いて，乳腺組織を対象としたせん断波波面の映像系を構成し乳腺の映像を得たので報告する．
【方法】
カラ−ドプラ法では同一方向へ連続して複数回のパルス送受信を行っており，S/N向上のためにN個の連続した受信信号の複素直交検波信号を得て，流速値を推定する．加振源からのせん断波の伝搬により時間的，空間的に周期的な微小変位が生じると，超音波受信信号にドプラシフトが発生し，せん断波の周波数，CFIのフレームレート，パルス繰り返し周波数に依存する偽りのドプラ周波数シフトが得られる．ここでパルス繰り返し周波数と，せん断波の周波数が特定関係にあるとき，CFI上にはせん断波の伝搬に起因する特徴ある波状パターン（せん断波の半周期ごとの波面に相当）が現れ，せん断波の周波数とフレームレートによって，その動く方向や速さが変化する．今回，乳腺中を伝播するせん断波を実時間で可視化するための工夫として，S/N向上を目的とした時間方向のフーリエ解析と，せん断波の反射により定在波が生じても進行波成分だけを抽出し再生波面の定量性を向上できる2次元方向フィルタとを新たに導入した．方向フィルタは，位相像の空間スペクトル（波数ベクトル）を二次元フーリエ変換で計算するフィルタ適用後，逆フーリエ変換で位相像の再構成を行った．小型のリニア振動モータ（重さ30g，長さ45mm）を加振器として用いた．
【実験結果】
IRB承認の下で映像化実験を行った．図（a-1），（b-1）は進行波，反射波の空間スペクトルである．図（a-2），（b-2）は空間スペクトルから再構築された，せん断波の位相像である．せん断波の周波数は296.6Hzである．超音波映像装置はフィリップス社HD11XE（12-3MHzリニアプローブ）を使用した．方向フィルタにより，せん断波の伝搬方向ごとに分けられていることが確認できる．
【結論】
CD SWI法を乳腺に適用し，せん断波の伝播を実時間で映像化した．方向フィルタを導入することで，定在波の影響がないせん断波の位相像が作成できた．
［1］笠原他，第87回日超音医抄録集，87-基-021，S474（2014）．