Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

特別プログラム 血管
パネルディスカッション 血管 1 下肢静脈エコーの現状と課題-診断から治療まで-

(S466)

フォーム硬化療法による一次性下肢静脈瘤治療における下肢静脈エコーの役割

The role of venous duplex ultrasound in the treatment of primary valvular insufficiency of the lower extremities

八巻 隆

Takashi YAMAKI

東京女子医科大学形成外科

Department of Plastic and Reconstructive Surgery, Tokyo Women’s Medical University

キーワード :

近年,一次性下肢静脈瘤の治療は,手術治療から血管内治療へと変化を遂げてきた.それに伴い,下肢静脈エコーはこれまで同様の術前診断のみならず治療の一手技として欠かせない存在となり,さらに経過フォローにおける治療部位の再開通や術後静脈血栓塞栓症の有無評価等,新しい応用も一般化してきた.本講演では,フォーム硬化療法による一次性下肢静脈瘤治療において,術前診断から術後フォローにおける下肢静脈エコーの役割について報告する.
治療のターゲットとなる表在静脈不全の有無は患者を立位で計測し,パルスドプラ法を用い逆流時間0.5秒以上で逆流ありと診断する.また同時に静脈径や静脈の走行とドプラ入射角に留意しながら逆流速度や血流量も計測すれば,臨床治験のデータとして有用である.
洗浄性硬化剤のポリドカノールと空気を1:4で混合しmicrobubbleの状態で使用すると,微小気泡超音波造影剤と同様,流入した硬化剤がBモード断層像で高輝度に描出される.下肢挙上位で大伏在静脈(GSV)に穿刺しフォーム硬化剤を注入すると,大腿静脈‐大伏在静脈接合部に向かいに中枢側に流入していくことが観察されると同時に,逆流で下腿静脈瘤に向かって末梢側に流入していくことも観察できる.フォーム硬化剤による大伏在静脈の著明なspasmsの所見を手技の成功と評価する.
フォーム硬化療法後,1週間以内にBモード断層像でGSVを観察すると,血栓性閉塞している所見が確認する.この時,大伏在静脈の血栓の先進部の深部静脈への進展所見の有無を評価することが重要である.また,治療の部位に関わらず,深部静脈血栓症の有無もチェックすることが肝要である.
血栓性閉塞した大伏在静脈は,時間とともに退縮するのが観察される一方,血栓の再疎通から再び逆流を生じてくる症例も観察される.再疎通の原因として分枝静脈からの静脈血の流入所見や血管新生の所見も評価することが重要と考える.以上,フォーム硬化療法による一次性下肢静脈瘤治療において,下肢静脈エコーで確認しておくべき観察のポイントを提示する.