Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 0.677(2017年)→0.966(2018年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

特別プログラム 血管
シンポジウム 血管 2 ERで活かす血管エコー

(S464)

救急外来におけるpoint-of-care血管超音波

Point-of-care vascular ultrasound in ER settings

亀田 徹

Toru KAMEDA

安曇野赤十字病院救急科

Department of Emergency Medicine, Red Cross Society Azumino Hospital

キーワード :

携帯型超音波装置の普及が追い風となり,救急外来(ER)などベットサイドで行う超音波検査(US)は急速に普及している.医師がベットサイドで行うUSは,限られた時間で有益な情報を引き出せることに価値があり,検査室で行われる系統的USと異なり,観察部位や項目を絞って行われ,「point-of-care US」と呼ばれる.緊急性が高い状況でpoint-of care USが施行される場合,その所見は短時間で得られた患者情報をもとに解釈され,迅速な意思決定に利用される.一方時間に余裕のある場合には,的確な病歴聴取と身体所見取得に基づいた診断推論により想定される疾患を適切に列挙できれば,point-of-care USを短時間で正確に施行することが可能となる.
救急外来で医師(救急医)が施行する血管系のpoint-of-care USで有用性が示されているのは,腹部大動脈瘤と下肢深部静脈血栓症である.Point-of-care USをリードするアメリカ救急医学会(American College of Emergency Medicine)は既に2001年に包括的な救急USガイドライン初版,2008年に改訂版を発表しており,腹部大動脈瘤と下肢深部静脈血栓の評価はcore applicationに含まれている.
腹部大動脈破裂は致死的疾患であり,一刻も早く正確な診断が必要である.腹部大動脈瘤破裂の古典的三徴とされる疼痛,低血圧,拍動を伴う腫瘤触知がそろうのは50%程度とされ,緊急の画像診断が必要不可欠である.救急医によるUSを用いた症候性腹部大動脈瘤(破裂)の診断の有効性は2000年頃から報告され,7研究,655名を対象にしたsystematic review/meta-analysisによると,一定のトレーニングを受けた救急医(レジデント)による腹部大動脈瘤のUSによる診断の精度は,感度99%(95%信頼区間96-100%),特異度98%(95%信頼区間97-99%)と非常に高いことが示されている.特に破裂でバイタルサインが不安定な場合には,一定のトレーニングを受けた救急医によりUSのみで存在診断を行う正当性は示されている.
肺血栓塞栓症の原因となりうる下肢深部静脈血栓症の検査前評価としてmodified Wells scoreの有用性が示されており,病歴と身体所見に基づいて数値化される.そして除外診断に有用であるDダイマーと検査室のUSを用いて診断されるのが一般的であろう.検査室で行われる下肢全体の深部静脈を走査するwhole-leg US(comprehensive US)は確実な方法だが,十分な経験のある検者が高性能装置を用いて行うべきで,かなりの検査時間を要する.一方,総大腿静脈と膝窩静脈の2点を圧迫走査のみで評価する2-point US(limited-compression US)は簡便で,超音波を専門にしない救急医でも一定のトレーニングを受ければ施行可能である.救急医による2-point USとDダイマー,外来フォローを組み合わせと,放射線科でのwhole-leg USとの比較では,その後の症候性静脈血栓塞栓症の発症に差がなかったという報告や,2-point USの導入により,検査室でのwhole-leg USの件数を減じ,診断までの時間短縮が可能という見解が示されている.
今後血管系のpoint-of-care USが本邦において正当な評価を受けるためには,ガイドラインの作成や教育プログラムの開発,「情報の共有」のためにUS所見や画像の適切な記録と管理が必要不可欠となる.