Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 0.966(2018年)→0.898(2019年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

特別プログラム 腎・泌尿器
シンポジウム 腎・泌尿器 2 小児の腎泌尿器超音波検査

(S443)

小児における腎尿路の感染症・奇形と超音波検査

Ultrasound of the urinary malformation and infectious disease in children

余田 篤

Atsushi YODEN

大阪医科大学小児科

Asssistant Professor, Osaka Medical College

キーワード :

小児の腎尿路の超音波検査に際しては,年齢別に,サイズの違いや皮質輝度を含めた皮髄構築の違いを念頭に置いて検査をする.新生児では皮質は薄く,エコー輝度が高い.成長とともに皮質エコー輝度は低下し,皮質部分の割合が増加する.急性の腎炎や腎不全などの腎症や慢性腎炎などではしばしば腎皮質のエコー輝度が上昇している.また,炎症や腫瘤では腫大することが多いので,正常サイズを認識しておくと腫大の有無が評価しやすい.腎尿路の超音波検査では仰臥位だけでなく,腹臥位での腎の検索も忘れてはならない.
小児科領域の腎尿路疾患では,腫瘍性疾患よりも尿路奇形の合併が多く,しばしばスクリーニングでも尿路奇形が超音波で診断される.超音波が診断に有用な疾患を上部尿路から順にあげると,水腎症,水尿管,低形成腎・萎縮腎・片腎,嚢胞性腎疾患,馬蹄腎,重複腎盂・重複尿管,膀胱憩室,尿管瘤,尿路結石などがあげられる.新生児から乳児期では正常でも腎中心部エコーが数mm程度に離解していることが多く,これを安易に水腎症と診断してはならない.低形成腎と萎縮腎の超音波での鑑別は困難なことが多い.嚢胞性腎疾患では遺伝性多発性嚢胞腎(優性,劣性)や多嚢胞性異形成腎などがあり,多嚢胞性異形成腎は新生児期から乳児期で片側性に観察され,経過とともに退縮,消失し,片腎となることが多い.筆者が初学者の頃に多発性嚢胞腎が観察され,お母様の多発性嚢胞腎を同時に診断したことは忘れられない.メンケス病では膀胱憩室を合併しやすく,腎尿路異常から原疾患が示唆されることもある.
尿路感染症では上記の尿路奇形が高率に合併しやすいことが知られている.また,乳児の発熱疾患では10%前後が尿路感染症であることが知られていて,不明熱や尿路感染症では超音波検査はスクリーニングとして必須とされている.尿路感染症では腎盂腎炎,急性巣状細菌性腎炎,腎膿瘍,膀胱炎などがあげられる.腎盂腎炎と急性巣状細菌性腎炎の異同に関しては論議される点もあるが,一般に腎盂腎炎が重症化すると急性巣状細菌性腎炎となり,さらに進行して腎膿瘍となるといわれている.急性巣状細菌性腎炎ではしばしば炎症部位が発症時には腫大し,治療経過とともに腫大は消失し,長期的にはしばしば同部の萎縮や変形が観察される.逆に腎の部分的な萎縮や変形が観察されれば,急性巣状細菌性腎炎などの重症感染症の既往が示唆される.小児に多い膀胱尿管逆流症に伴った腎盂腎炎では高率に腎盂壁の肥厚が観察される.この腎盂壁の肥厚が観察されれば,既往も含めて膀胱尿管逆流症が示唆される.近年のパワードプラなどでは膀胱から尿管への逆流も観察されるかもしれない.
腎尿路の直接的な感染症ではないが,病原性大腸菌感染症に伴う出血性腸炎に合併する溶血性尿毒症症候群(HUS)の腎症も忘れてはならない.この腸炎では右腹部の強い腹痛と顕血便を訴えることが多く,超音波では著しい大腸壁肥厚が観察されやすい.まず,虫垂を観察して虫垂炎を否定し,この時にHUSを考慮して,腎のエコー輝度と左右の腎動脈血流を観察することが勧められる.HUSを合併していると,腎は腫大し,腎実質のエコー輝度が上昇し,腎動脈血流が低下していることが多い.このような例ではHUSが強く示唆され,検尿,血液生化学検査などを迅速で行うことで早期の集中治療へと進むことができる.自験例では大腸壁の肥厚が著しいほどHUSを合併しやすい.
以上のように小児期腎尿路疾患では超音波検査は必須の検査であり,検者は年齢による正常像と,小児特有の腎尿路疾患を理解して検査を施行することが望まれる.