Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

特別プログラム 腎・泌尿器
シンポジウム 腎・泌尿器 1(一部英語) 透析腎癌や診断困難な腎腫瘤に対する造影超音波検査の有用性

(S439)

透析腎癌における血管特性−病理と予後からの考察−

Characteristics of microcirculation on renal cell carcinoma

山本 徳則, 舟橋 康人, 松川 宜久, 後藤 百万

Tokunori YAMAMOTO, Yasuhito FUNAHSI, Yoshihisa MASTUKAWA, Momokazu GOTOH

名古屋大学泌尿器科

Urology, University of Nagoya

キーワード :

我々の教室では,透析導入10年以上の腎細胞癌は10年以内より予後が不良であることを報告している.その理由として1)透析導入10年以内で発見された腎細胞癌以内は持ち込み腎細胞癌の可能性2)透析導入10年以内で発見された腎細胞癌は透析による悪性化(肉腫変化)の可能性を考察している(Nephrol Dial Transplant 2011).今回我々は,透析導入10年以上で発見された腎細胞癌についてその血管特性を造影超音波で比較検討した.以前,我々は腎細胞癌の血管特性について超音波造影剤ソナゾイドを用いて報告している(BJU INT 2011),造影剤は経静脈的にボーラス(0.015ml / kg)で注入し,装置はGE製LOGIQ 7を使用し,時間濃度−曲線を腫瘍(TIC)と正常組織で比較検討した.主に外来では4Cプローブ(コンベックスプローブ)で周波数4.0MHz/MI値0.29/深さ13cm/フレームレート11Hz/ハイブリッドコントラストモード,そして主に手術中では9Lプローブ(リニアプローブ)/周波数 6.5MHz/MI値0.31/フレームレート10Hz/ハイブリッドコントラストモードで行った.手術で腎臓摘出し病理組織診断された透析腎癌(透析導入後10年以上経過し発生した腎細胞癌(n=6))と非透析腎癌(腎機能が正常な腎細胞癌(n=16)(総腎機能かつ腎シンチで分腎機能が低下していない))を造影超音波検査(濃度−時間曲線:TIC)と病理組織で臨床的検討を行った.TIC曲線において,透析,非透析症例の造影剤の強度(ΔI(db))とピークまでの時間(TTP)は差がななかった.しかしながら,その勾配(ΔI / TTP)は有意に急峻であった.透析腎癌の腫瘍血管特性(TIC曲線)は勾配が急峻であり,透析腎実質の血流が低下し,比較的に腫瘍部分の血流が相対的に増加していることによると考えられる.すなわち超音波造影剤流入パターンにおいて透析によって血管反応性が低下した腎実質血管と腫瘍との差によるものと考えられた.透析10年以上経過した腎臓に生じる鑑別困難な腫瘤病変の質的診断に造影超音波(TIC曲線)は有用な可能性が示唆された.