Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 0.966(2018年)→0.898(2019年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

特別プログラム 乳腺
シンポジウム 乳腺(JSUM・JABTS共同企画) 乳腺における造影超音波の位置づけ

(S398)

乳腺診療に乳房造影超音波をいかに活用するか

Making use of contrast-enhanced ultrasonography in clinical practice of breast disease

奥野 敏隆

Toshitaka OKUNO

西神戸医療センター乳腺外科

Department of Breast Surgery, Nishi-kobe Medical Center

キーワード :

【はじめに】
2012年8月にソナゾイドが乳腺腫瘤に対して公的保険適用拡大され,3年以上が経過した.しかし乳房造影超音波の診断的有用性は確立されておらず,未だ普遍的な検査法ではない.当院においては目的を明確に定め,症例を選択して行ってきた.その成績を示し,乳腺診療における造影超音波の位置づけを明らかにし,今後の課題について考察したい.
【対象】
2012年11月から2016年2月に造影超音波を行った45症例,のべ51検査を対象とした.性別は女性43例,男性2例.年齢は17歳から84歳,平均59歳.経過観察例11例,切除例34例.切除例の内訳は乳癌が28例(浸潤癌15例,乳管内癌13例),良性病変6例(線維腺腫4例,乳管内乳頭腫2例)あった.
【方法】
使用機種は東芝メディカルシステムズAplio 500(探触子:PLT-805AT),GE Healthcare社LOGIQ S8(探触子:11L,ML6-15).造影超音波の目的として1)組織型推定と良悪性の鑑別,2)病変の広がり診断,3)MRI発見病変のセカンドルックエコー,4)術前化学療法の効果判定,5)温存乳房内再発の診断の5つを掲げた.この目的別に症例の造影超音波像とその診断能を振り返る.
【結果】
目的別の検査数は1):27例,2):22例,3):5例,4):12例,5):2例(重複あり)であった.
1)組織型推定と良悪性の鑑別
乳房超音波診断ガイドラインの染影パターンによる良悪性鑑別基準による診断能は感度77%(10/13),特異度93%(13/14),正診率85%(23/27)であった.組織推定が可能であったのは27例中18例(67%)であった.
2)病変の広がり診断
21例全例において的確な広がり診断が可能であった.
3)MRI発見病変のセカンドルックエコー
5例中1例のひとつの腫瘤の同定ができなかった他はMRIで発見した病変を造影超音波で同定可能であった.
4)術前化学療法の効果判定
5例の乳癌に対して11検査を行った.病理学的完全奏効の4症例においては造影効果の消失を認めた.
5)温存乳房内再発の診断
Bモードにて温存乳房内再発を疑った2例に造影超音波を行った.2例ともほとんど造影を認めず,創部瘢痕と診断可能であった.
【考察】
ソナゾイドの適用拡大のための臨床試験に用いられた染影パターンによる良悪性診断基準があるが,これは多彩な病理像を呈する乳腺病変に適用するには不十分であると考える.DuらはSonoVueを用いた積算画像の検討からtreelike patternは良性を,crab claw-like patternは悪性を示唆する特徴的な血流様式であると報告している.また,Hanらは乳頭状病変の造影超音波の検討から,perilesional linear ductal enhancementやheterogeneous enhancementが特徴的な造影所見であり,late overall wash-outやregional perfusion defectが悪性を示唆する所見であると述べている.病理組織学的な裏付けに基づく造影所見と診断基準の策定が望まれる.広がり診断に関して,乳管内病変の進展範囲,間質浸潤範囲,副病変の同定に造影超音波はBモードよりも優位である.広がり診断については背景乳腺の輝度を抑えることのできるamplitude modulation法が特に有用である.Bモードでは確定できない副病変も造影を行うことにより確定でき,また手術と同じ体位でできる造影超音波は切除範囲の設定に有用である.術前化学療法例においては,染影の程度と腫瘍のviabilityが良く相関し,また早期に造影効果の低下する症例で奏効する傾向がみられた.
【結語】
乳房造影超音波においては病理組織像に則した診断基準の策定が課題であり,切除範囲の設定への応用が期待される.