Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 0.966(2018年)→0.898(2019年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

特別プログラム 産婦人科
ワークショップ 産婦人科 胎児治療における超音波診断の役割

(S393)

胸腔羊水腔シャント術後の胎児循環虚脱における静脈管血流の臨床意義についての考察

Clinical features of ductus venosus blood flow pattern in the fetal cardiac collapsing after thoraco-amniotic shunting

高橋 雄一郎

Yuichiro TAKAHASHI

国立病院機構長良医療センター産科

Fetal-maternal Medicine, Nagara Medical Center

キーワード :

【目的】
重症胎児胸水は近年,胸腔羊水腔シャント術(TAS)が保険適応となるなど胎児期への介入により予後の改善が図られるようになってきた.しかし中にはTASを施行しても救命できない循環不全を来す胎児の存在が認められるようになってきた.当院では近年,臍帯静脈血流量(UVFV)を指標とする事で「胎児循環虚脱」という病態があることを報告してきた.今回はその解析の中で特に静脈管(DV)に注目し,胎児循環虚脱における胎児静脈系血流の意義について解析し,循環虚脱の病態および静脈管血流波形の病態生理について考察したので報告する.
【対象・方法】
症例は重症胎児胸水を認め,一回胸腔穿刺を施行したが1週間以内に再貯留を来しTASを施行した22例である.術前,術後でのべ72回の超音波検査を施行し,UVFVおよびDVの血流を比較検討した.なおUVFVはBPDを用いた理想推定体重(浮腫や腔水症をのぞくため)にて補正してあり,Kiserudらの報告をもとに検討し,今回は50ml/min/kg(約2.5%tile)以下を「胎児循環虚脱」と定義した.DVはJSUMにて報告された方法で評価した.
【結果】
娩出直前に胎児循環虚脱を来した6例およびコントロール16例すべてにおいてDVのA波逆流は認めなかった.循環虚脱を来した10例18回の計測では平均30.9+/-12.9ml/min/kgに対してDVPIは0.82+/-0.4(median 0.75,range 0.29-1.95)で相関はみとめなかった.循環虚脱時にDV PI値が1以上を示した症例は予後不良群の3例で存在した.1.4の例は直後に娩出したが肺低形成による気胸で新生児死亡,1.95の例は翌日胎児死亡,1.1の例は生存しているがNICUの長期管理を要した.しかし,のこりの7例15計測では循環虚脱を示しているにもかかわらずDVPI値は1以下であった.
【考察・結論】
現状では胎児循環虚脱とDV血流異常に関しては明らかに相関が存在しない事が判明した.特にA波の逆流といった所見を一例も示していない事実は,胎児循環虚脱という新しい胎児循環不全の特徴を示している可能性がある.すなわち静脈管は臍静脈からの流入血流が自動調節能により血管攣縮させる機構を用いて血流を増幅し,右心房へと注ぐ血管である.その圧格差でその血流波形が規定されると想定されていたが,今回の臨床モデルにおいては,胎児の循環血液量の減少に伴い心臓血流が維持できず,左心室からの拍出が低下しているが心臓そのものの機能が落ち込んでいない為に,DVPIが正常に保たれていた可能性を示唆している.今回の結論は胎児循環虚脱の病態および静脈管の血流の病態生理の解明に貢献すると考えられる.