Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 0.966(2018年)→0.898(2019年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

特別プログラム 産婦人科
パネルディスカッション 産婦人科 子宮を診る—超音波検査の可能性と限界—

(S383)

胎盤位置異常における超音波所見と予後の予測〜妊娠子宮のどの部分が大きくなるのか?

Predicting adverse outcome of the low-lying placenta: Which part of the uterus grown more in pregnancy?

成瀬 勝彦, 重富 洋志, 吉元 千陽, 重光 愛子, 赤坂 珠理晃, 常見 泰平, 佐道 俊幸, 小林 浩

Katsuhiko NARUSE, Hiroshi SHIGETOMI, Chiharu YOSHIMOTO, Aiko SHIGEMITSU, Juria AKASAKA, Taihei TSUNEMI, Toshiyuki SADO, Hiroshi KOBAYASHI

奈良県立医科大学附属病院産婦人科

Obstetrics & Gynecology, Nara Medical University

キーワード :

【目的】
前置・低置胎盤は補助生殖医療との相関や既往帝王切開術後の重篤な癒着の発生など,近年危機感をもって対応の検討されている疾患である.超音波技術の発達により胎盤位置の異常については容易に診断が可能である.他方,妊娠初期に低置胎盤(辺縁から内子宮口まで2cm以下)の診断を受けていた妊婦が,子宮の増大に伴って何事もなく分娩する例はよくある.脱落膜に浸潤している胎盤が這って動くことは考えにくく,子宮のいずれかの部分が大きく伸張しているのであろうが,そのメカニズムを視認することはできているのであろうか.低置胎盤症例の経過と超音波所見,周産期予後からこの命題を検討した.
【方法】
過去2年間に当院にて健診,もしくは高次施設での管理が必要との理由で紹介され,分娩した低置胎盤症例19例(全分娩の1.0%)につき,Prosound F37およびUST-9118経腟プローブ(日立アロカメディカル株式会社)を用いて健診時に膀胱の空虚な状態で全例超音波検査を行った.保存された超音波画像および診療録を検討し,胎盤付着位置と子宮頸管長,頸管腺領域像から推定できる産科学的内子宮口まで卵膜が膨大しているか否かについて計測もしくは判定したほか,Bモード画像にて胎盤付着部位の頚管方向に静脈叢を疑わせる所見,またはカラードプラ法で組織内への血流を疑わせる所見を認めた8例(S群)をこれらのない11例(N群)と比較し,分娩様式や分娩時期,分娩時出血量などの周産期予後を比較した.本研究は本学倫理委員会の承認を得て,妊婦の同意の下に最小限の診察時間で行われた.
【結果】
当該期間に当院で低置胎盤と記録されている症例全てが胎盤後壁付着の症例であり,念のため更に数年さかのぼっても全てが後壁付着であって,前壁付着の「低置胎盤」として紹介された症例は全てが分娩時までには内子宮口から離れ,通常の分娩として扱われるか前医へ逆紹介されていた.なお,同期間の前置胎盤については後壁・前壁ほぼ同数であった.経産回数,既往帝切の有無,母体年齢,診断の週数と産科学的内子宮口までの開大があった時期,胎盤辺縁から内子宮口までの距離,にはいずれも差がなかったが,診断時の子宮頸管長はS群(平均40.9mm)でN群(30.7mm)に比し有意に長かった(p=0.024).S群では全例に選択的帝切が行われていたが,N群では経腟分娩4例,選択的帝切5例,緊急帝切2例と,一定数の経腟分娩が行われていた.分娩時出血量や大量出血(経腟800g,帝切1500g以上)の有無,出生児体重や胎盤重量に差はなく,重篤な合併症や児の予後,同種血輸血症例は認めなかった.
【考察】
「低置」胎盤の妊娠経過中における挙動をみることで,これまで実感はされていても証明することのできなかった「子宮下節は前壁側が圧倒的優位に増大する」ことが示された.後壁付着の低置胎盤について頸管長と組織内血流所見に関連があったこともあわせて,これまで十分明らかになっていない子宮の正常・異常妊娠における増大機構を示唆するものである.他方,産科学的内子宮口に至るまでの子宮下節の増大は妊娠20〜30週でよく観察されるものであるが,今回の超音波異常所見の有無や診断週数とは一定の相関がなく,その観察法や精度,診断意義についてはさらに多くの症例で検討する必要がある.またS群で全例での選択的帝切が行われており,「見えすぎた」ことがやや過剰な診療につながっている危険性もあるため,その診断方法についてもさらに検討する必要がある.