Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 0.966(2018年)→0.898(2019年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

特別プログラム 産婦人科
シンポジウム 産婦人科 3 胎児診断における3D/4D超音波の活用について

(S379)

First trimesterの3D胎盤体積計測による母体・胎児スクリーニング

Placental Volume Measurement in the first trimester in Clinical Practice

長谷川 潤一

Junichi HASEGAWA

聖マリアンナ医科大学産婦人科学

Department of Obstetrics and Gynecology, St. Marianna University School of Medicine

キーワード :

【緒言】
胎盤の発育不良は,胎児発育不全の原因となる.胎児発育は胎盤発育に強く依存し,胎児発育不全に早剥,血腫,分葉胎盤などの異常が合併しやすいと言われるのは,胎盤が委縮したことや,胎盤の変性が起きた結果であると考えられる.その一方,明らかな胎児発育不全の原因が,児にも胎盤にもみられないことがある.そのような場合でも一般的に胎盤重量は小さいことが多い.母体環境,子宮胎盤循環などが全体的に胎盤の発育を悪くし,それが胎児発育不全になると推定される.胎児を育てる胎盤を評価することは,それ以降の胎児や胎盤のトラブルを予測する一助になるかもしれない.本講演では,3D超音波を用いた胎盤体積の測定が,日常臨床で,どのように有用なツールとなり得るかを論じる.
【胎児発育不全の予測】
First trimesterの3D超音波による胎盤体積の測定による,後の胎児発育不全の予測に関する報告がある.Placental quotient(= placenta volume/crown-rump-length)が1.00未満であるとSGAが56.5%の感度,75%の特異度,31.7%の陽性反応的中度であるといわれている.また,Serum pregnancy-associated plasma protein A(PAPP-A)と合わせて検討すると,より精度がよくなると言われている.
【妊娠高血圧症候群の予測】
妊娠高血圧症候群は,second trimester以降の母体の全身疾患であるが,その発症はfirst trimesterにおきる絨毛細胞によるらせん動脈のリモデリングの異常に由来する.よって,妊娠高血圧症候群を起こすリスクのある妊婦では,妊娠初期の胎盤は小さく,子宮動脈ドプラ波形に変化が現れている可能性がある.First trimesterの胎盤体積と子宮動脈ドプラ波形をあわせたcombination testで,より妊娠高血圧症候群の検出率が高くなることが知られている.さらに,血清マーカーを用いれば,5%の偽陽性率で,69.2%の早発型の妊娠高血圧症候群を検出できると言われている.
さらに,妊娠高血圧症候群の発症時期別にわけてみると,早発型の妊娠高血圧症候群は,正常例とくらべfirst trimesterの胎盤は有意に小さかったが,遅発型とは違わなかったことが報告されている(早発型:5%の偽陽性率で,検出率67.5%).この早発型のみを予測できたという結果は,早発型と遅発型の妊娠高血圧症候群の発症機序に何らかの違いがあると考えられることを示唆する.また,first trimesterの母体血圧,子宮動脈ドプラ,血清マーカーによる妊娠高血圧症候群の予測とほぼ同じ精度である.
【胎児染色体異常の予測】
First trimesterの胎盤体積と胎児染色体異常の関連について調べた検討がある.trisomy 21やTurner syndromeでは明らかな違いはなかったが,trisomy 13や18では胎盤が小さかった.このことは,trisomy 13や18で,すでに早くから起きている胎盤と胎児の発育不全の状態をみているものと考えられた.
【結語】
妊娠中期以降の胎盤体積の計測には限界があるが,first trimesterの3D超音波による胎盤体積の計測は,簡便で,高額な費用をかけることなく測定することができる.また,血清マーカーなどとほぼ同等のスクリーニング精度である.妊娠初期の胎盤体積,子宮動脈を中心としたマーカーのcombination testは,特に,早発型の胎児発育遅延や妊娠高血圧症候群のハイリスク例の抽出に役立つ可能性があり,日常臨床でハイリスク例の抽出の一助になると考えられた.