Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

特別プログラム 産婦人科
シンポジウム 産婦人科 2 胎児胎盤機能の超音波評価

(S375)

胎児発育不全症例における臍帯静脈流量と胎児機能不全の関係

Usefullness of evaluation for fetal umbilical placental circulation using umbilical vein flow volume

瀧田 寛子

Hiroko TAKITA

昭和大学医学部産婦人科

Showa University School of Medicine, Dept. of Obstetrics and Gynecology

キーワード :

【目的】
臍帯静脈流量は在胎週数に伴って増加することが報告されている.胎児発育不全の症例では胎児胎盤循環の増悪に伴って,その増加が悪いのではないかと考えた.胎児発育不全症例での臍帯静脈流量の変化と,胎児機能不全との関連を明らかにすることを目的とした.
【方法】
2014-2015年に,当院の妊婦健診を妊娠20週以降に受診した妊婦を対象に,推定体重と臍帯静脈流量のデータを前方視的に集めた.分娩時の,低出生体重(SGA)や胎児機能不全との関連を調べた.臍帯静脈流量(理論値)は,経腹プローブ(GE Voluson E8,RM-6C probe)を用いて,臍帯のフリーループの臍帯静脈径(内径),臍帯静脈流速を測定し,(臍帯静脈径/2)2*3.14*臍帯静脈流速(ml/min)して求めた.検討1(正常発育症例の臍帯静脈流量の変化):正常発育症例を対象に,妊娠20−36週に経腹超音波断層法で臍帯静脈流量を計測し,週数ごとのパーセンタイル値を求めた.検討2(正期産で出生したSGA症例の臍帯静脈流量)正期産で出生したSGA症例と正常例の妊娠36週の臍帯静脈流量を比較した.検討3(胎児発育不全児の胎児機能不全発症と臍帯静脈流量)当院で妊娠中期より妊婦健診を施行し,その後当院で入院管理を要した胎児発育不全症例を対象とし,胎児機能不全で早期介入を要した症例と,胎児機能不全を認めず,正期産前後で分娩となったcontrolの分娩直前の臍帯静脈流量を検討1で求めた中央値で標準化(MoM)して比較した.早期介入は,臍帯動脈の途絶(妊娠28週以後),逆流(妊娠26週以後),もしくは静脈管の逆流(妊娠24週以後)とした.本研究は,当院の倫理委員会の承認および,患者の承諾を得て行った.申告すべき利益相反はない.
【結果】
検討1:臍帯静脈流量は週数に伴って増加していくことが示された.検討2:妊娠36週の臍帯静脈流量はSGA症例で169.9±62.4ml/min/kg,正常発育症例で230.1±95.0ml/min/kg(p=0.036)であった.妊娠36週の臍帯静脈流量のMoM値はSGA症例で0.82±0.82MoM,正常発育症例で1.31±0.53MoM(p=0.002)であった.なお,正期産のSGA症例の娩出理由は骨盤位,陣痛発来,妊娠高血圧症候群の増悪,胎児心拍数図モニタリング異常が含まれていた.検討3:胎児発育不全症例のうち,早期介入を必要とした6例,control 56例を比較した.早期介入例とcontrolでの分娩週数(平均±標準偏差)は,それぞれ,29.8±2.3週,36.3±2.7週(p=0.030),分娩直前の臍帯静脈流量のMoM値は早期介入群で0.38±0.13MoM,Controlで0.82±0.34MoM(p=0.001)であった.また,早期介入例は臍帯静脈流量の増加傾向が停滞していた.
【結論】
正常発育症例では,妊娠週数の増加にともなって臍帯静脈流量は増加傾向を示したが,胎児発育不全では,臍帯静脈流量は正常例と比較し少ない傾向があった.さらに,血流所見で異常を呈し,早期介入が必要とされた胎児発育不全症例では血流異常を認めなかった症例と比較して,臍帯静脈流量が少なく,増加傾向の停滞を認めた.胎児発育不全児の臍帯静脈流量の多寡を評価しておくことによって,胎児のwell-beingや娩出基準の指標になる可能性が示唆された.