Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 0.966(2018年)→0.898(2019年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

特別プログラム 産婦人科
シンポジウム 産婦人科 1 胎児心臓超音波検査 見つけにくい心疾患をどう見つけるか?

(S371)

総肺静脈還流異常の新しいスクリーニング法

The new screening method for fetal TAPVD

川滝 元良

Motoyoshi KAWATAKI

東北大学産婦人科

Obstetrics and Gynecology, Tohoku University

キーワード :

【背景】
単独の総肺静脈還流異常(TAPVD)は,発生頻度が多く,出生後早期に緊急の開心術を必要とすることが少なくないことから,胎児診断が最も必要とされる重症心疾患の一つと考えられている.しかし,他の重症心疾患に比較して胎児診断率は極めて低いのが現状である.そこで,TAPVDをスクリーニングするための新しい方法がいくつか提案されているが,それらは,レベル1のスクリーニングを行う産科医,検査技師に新たな負担となる可能性がある.そこで,今回は,従来行われてきたレベル1のスクリーニング法を活用して,TAPVDをスクリーニングする方法を提案する.
【方法】
TAPVDは全ての肺静脈が左房に還流せず,体静脈に還流する心疾患である.TAPVDでは肺静脈が還流する部分の体静脈が拡大することが知られており,出生後の心エコー検査では,このような体静脈の拡大はTAPVDのタイプ診断を行う上で重症な心エコー所見として認識されている.今回,我々は,単独のTAPVD 12例(1a 3例,1b型4例,3型5例)を対象として,体静脈の拡大(無名静脈,上大静脈,および腹部の垂直静脈)所見の有無を検討した.コントロールとしては,心内疾患を合併しない左上大静脈遺残(PLSVC)10例,週数をマッチさせた正常心120例である.
【結果】
1)無名静脈の大きさ
単独PLSVC,正常心,TAPVD 1a型で比較した.単独PLSVCでは無名静脈は全く観察されなかった.TAPVD 1型では,週数をマッチさせた正常心の無名静脈に比べて,50%以上の拡大を認めた.
2)上大静脈の大きさ
TAPVD1b型,TAPCD1a型を正常心と比較した.週数をマッチさせた正常心の上大静脈に比べて,TAPVD 1b型では50%以上の拡大を認めた.特に上大静脈と合流する部分で高度の狭窄を有した症例では,合流部分の上大静脈が2倍以上に拡大していた.TAPVD 1a型でも上大静脈の拡大は求められたが,程度は軽度であった.
3)腹部の垂直静脈
TAPVD3型と正常心で比較した.正常心では,通常,下行大動脈,下大静脈以外の血管の横断面像は腹部横断では観察されない.時に似た像を認めることがあるが,数秒後には自然消失することから,それらは食道と考えられる.TAPVD3型では下行大動脈,下大静脈と三角形を作る第3の血管を全例で観察できた.
【考案】
出生後には必ず観察される体静脈の拡大所見が,胎児心エコーでも同様に観察できれば,胎児スクリーニング法として活用できる可能性がある.TAPVD1a型とPLSVCはthree vessel trachea viewで動脈管弓の外側に静脈を認める点では同じである.しかし,PLSVCでは無名静脈は全く認めないのに対し,TAPVD1a型では無名静脈が拡大している点で大きく異なっていた.TAPVD1b型では,SVCは明らかに拡大していた.特に,肺静脈狭窄を有するハイリスク症例では,拡大はより高度であった.TAPVD3型では正常では認めない腹部の第3の血管を認め,下行大動脈,下大静脈と三角形を形成していた.以上より,体静脈の拡大所見に注目することで,TAPVDを簡単にスクリーニングすることができることが分かった.この手法は,従来行われてきたレベル1のスクリーニングを活用したものであり,カラードプラーやパルスドプラーを必要としないことから,レベル1のスクリーニングを行う産科医,検査技師にも使用しやすいスクリーニング法と考えられる.