Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 0.966(2018年)→0.898(2019年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

特別プログラム 消化器
ワークショップ 消化器 3 超音波所見と病理像の不一致例を見直す

(S357)

超音波(Bモード)は何を表しているの?

What is the ultrasonic tomographic image from engineer side?

長井 裕1, 長沼 裕子2, 石田 秀明3

Hiroshi NAGAI1, Yuuko NAGANUMA2, Hideaki ISHIDA3

1NGI研究所, 2市立横手病院消化器科, 3秋田赤十字病院超音波室

1NGI Laboratory, 2Department of Gastroenterology, Yokote Municipal Hospital, 3Center of Diagnostic Ultrasound, Akita Red Cross Hospital

キーワード :

1.工学的に見た超音波
超音波診断装置の原理を説明するのに,我々はしばしばコウモリやイルカの話をする.彼らの優れた能力と超音波診断装置のやっていることの理論には変わりがなく,あらためてエンジニアとして神々の偉大さを思い知る訳である.
Bモードは生体内を超音波が伝倍し,透過,反射,減衰,そして屈折の結果を断層表示している.基本はAモード信号で信号の強度を見ていた.信号強度を輝度に変え,2次元マッピングすることでBモード画像が得られた.これにより,超音波診断装置がフレンドリーなものになり,超音波診断は広く普及するようになった.その後,流速波形表示のドプラをBモードにマッピングするカラードプラが考案され,さらなる機能が開発されたことで,超音波診断は学問上も飛躍的な進化を遂げている.
2.臨床的に見た超音波
超音波断層像には以外な落とし穴がある.これは,断層像と言いながら,画像を作るにあたっては,上から照射された超音波の反射波を断面として表示している,ということである.例えば,水族館の水槽をイメージしていただきたい.魚を見るときはガラス越しに水槽の中を見ているわけだが,超音波診断装置の画面は,横から見た断面画像でありながら,実際の情報は水面方向から得たものである.このことを頭に置いて画像を見ると,減衰や陰影などの超音波の振る舞いが,より親しく感じることができる.
また,超音波診断画面において送信周波数が画質の特性を担っている.パルス波の反射法なのになぜこれほどまでに周波数依存性があるのだろうか.
組織からの反射信号は,マクロ的に見た場合と,ミクロ的に見た場合とでどのように違いがでてくるのだろうか.
反射と散乱のメカニズムにどのような違いがあるのだろうか.画像に対するこれらのふるまいについて,考え方の一つを提示したい.
超音波画像の成り立ちは,反射信号であり,その反射はミクロ的に見れば多くのスペックルパターンによるものである.この発生機序は連続する反射波の重畳であるが,ここにその反射波に含まれる周波数がからんできていることが判る.これより,中心周波数,帯域などが画質に大きく影響している.一方マクロ的な反射のメカニズムは骨やガスなどの反射が考えられる.さらに,この中間や混合の反射信号により,診断のためのBモード画像が構築されている.
また,筋繊維などの場合は超音波がどのように透過し反射するかで,我々は同じ組織でもまったく変わる画質になることを経験している.細胞密度や,細胞配列と超音波の進行方向によって先に説明したミクロ的な反射メカニズムに違いができ,同じ組織でも異なった印象の断層像を得ることになる.
組織の密度,ばらつきに関しては,過去において,ヒストグラム解析,テクスチャー解析,インテグレーテッドバックスキャッタなどが研究,発表されている.どれも,定性的な画像情報を定量化しようとする先人の知恵と努力が感じられる研究である.しかし,あえて意見を言わせていただくと,「痛み」を定量化するのと同じく,無理なことをしているのではないかという疑問が湧いてくる.私は定性的な情報は心の目で見るべきものと考え,その発生機序を理解し,解明することで,その中にある情報を取り出す方法を支持したいと思う.このためには,エンジニアも過剰な画像の加工は不要であると考えている.
3.結語
Bモード表示は,超音波信号の詳細な情報がより明確に判断出来る.このすばらしい特徴を生かすため是非とも工学的なメカニズムのご理解をいただければと考えている.