Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

特別プログラム 消化器
ワークショップ 消化器 2 超音波による炎症性腸疾患の診断(一部英語)

(S354)

体外式超音波検査による潰瘍性大腸炎活動性評価 多施設共同前向研究中間解析結果から

Evaluation of Ulcerative Colitis Activity by Transabdominal Ultrasound based on an Analysis of Prospective Multicenter Study

西田 睦1, 2, 木下 賢治3, 表原 里実1, 2, 大西 礼造3, 桂田 武彦4, 清水 力1

Mutsumi NISHIDA1, 2, Kenji KINOSHITA3, Satomi OMOTEHARA1, 2, Reizo ONISHI3, Takehiko KATSURADA4, Chikara SHIMIZU1

1北海道大学病院検査・輸血部, 2北海道大学病院超音波センター, 3北海道大学大学院医学研究科消化器内科, 4北海道大学病院光学医療診療部

1Division of Laboratory and Transfusion Medicine, Hokkaido University Hospital, 2Diagnostic Center for Sonography, Hokkaido University Hospital, 3Department of Gastroenterology and Hepatology, Hokkaido University Hospital, 4Division of Endoscopy, Hokkaido University Hospital

キーワード :

【目的】
潰瘍性大腸炎(UC)に対する無侵襲な活動性評価方法として,体外式超音波検査(US)の有用性が報告されているが,その評価法は定まっておらず,施行者依存性も懸念されている.今回我々は,USと下部消化管内視鏡検査(CS)を比較する多施設共同前向き研究の中間解析にて,USのUCの活動性評価に対する有用性を検討した.
【対象・方法】
対象は2013年6月から2015年12月に,北海道大学病院(北大),太黒胃腸内科病院,苫小牧市立病院,NTT東日本札幌病院にてUSとCSを前後2日以内に行ったUC155例(検査回数166回).平均年齢±SD 43.8±17.0歳,男性100例,女性55例.大腸の7部位(盲腸,上行結腸,右側横行結腸,左側横行結腸,下行結腸,S状結腸,直腸)をUS,CSにてそれぞれ撮像し,USは自施設にて考案したUS grade,CSとCS施行時の生検はMatts gradeを用いて評価した.臨床的疾患活動性評価の指標にはclinical activity index(CAI), disease activity index(DAI)を用いた.US・CS検査時はそれぞれの結果をブラインドとし,北大超音波センターと消化器内科にて中央読影を行った.USとCSの大腸各部位の描出率,検査間の一致率,相関について検討した.統計学的検討として,大腸各部位の描出率はMcNemar検定,USとCSの一致率は級内相関係数ICC(2,1),検査間と検査と生検,CAI, DAIの相関はSpearmanの相関係数を用いた.
【結果】
大腸各部位の描出率は,US,CSそれぞれ盲腸97.0%,86.1%(p<0.001),上行結腸99.4%,88.6%(p<0.001),右側横行結腸100%,88.0%(p<0.001),左側横行結腸99.4%,89.8%(p<0.001),下行結腸100%,92.8%(p<0.001),S状結腸100%,98.8%(p=0.5),直腸97.6%,100%(p=0.13)であった.大腸各部位におけるUSとCSの一致率は,盲腸0.32(p<0.001),上行結腸0.42(p<0.001),右側横行結腸0.48(p<0.001),左側横行結腸0.54(p<0.001),下行結腸0.46(p<0.001),S状結腸0.44(p<0.001),直腸0.19(p<0.01)であった.症例毎のUSとCS, USと生検,CSと生検の最大gradeの相関係数はρ=0.51,0.41,0.57(全てp<0.001)といずれも中等度の相関を示した.USとCAI, DAI, CSとCAI, DAIとの相関はρ=0.34,0.40とρ=0.38,0.66(全てp<0.001)であった.
【考察】
USの描出率は盲腸から下行結腸にてCSより有意に良好で,S状結腸,直腸では有意差はなかった.CSでは患者状態などで観察を行わなかった例があったが,USではそのような例でも簡便・無侵襲に行えたと考えられた.USとCSの不一致例は,異なる部位の評価や,grade評価を迷う中間の所見で乖離していた.しかしながらUSとCSは中等度の一致,生検ともCS同様,中等度相関を認め,直腸,盲腸以外のUS活動性評価は有用と考えられた.CAIとの相関はCSと同様軽度であり,画像検査と臨床症状や身体所見とは必ずしも一致しない可能性があった.US, CSとDAIは中等度に相関した.
【結論】
USはUCに対する低侵襲で有用な画像診断になりうることが示唆された.