Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

特別プログラム 消化器
ワークショップ 消化器 1(一部英語) 慢性膵炎の超音波診断

(S348)

Real-time tissue elastographyを用いた早期慢性膵炎の評価

Evaluation of early chronic pancreatitis using real-time tissue elastography

石井 康隆, 芹川 正浩, 清水 晃典, 壷井 智史, 栗原 啓介, 辰川 裕美子, 宮木 英輔, 河村 良太, 津島 健, 茶山 一彰

Yasutaka ISHII, Masahiro SERIKAWA, Akinori SHIMIZU, Tomofumi TSUBOI, Keisuke KURIHARA, Yumiko TATSUKAWA, Eisuke MIYAKI, Ryota KAWAMURA, Ken TSUSHIMA, Kazuaki CHAYAMA

広島大学病院消化器・代謝内科

Department of Gastroenterology and Metabolism, Hiroshima University Hospital

キーワード :

【背景】
早期慢性膵炎の診断の中心はEUSであるが,そのEUS所見がどのような組織学的所見を反映しているかについては未だ不明な点が多く,早期慢性膵炎の組織学的な線維化の程度を評価することは容易ではない.Real-time tissue elastography(RTE)は超音波を用いて組織の弾性情報を画像化する技術であり,組織の線維化の程度を評価する方法として様々な領域でその有用性が報告されている.今回我々は,早期慢性膵炎におけるRTEの有用性を検討した.
【方法】
当科で診断した早期慢性膵炎27例(疑い9例を含む)を対象とした.RTEはHI VISION Ascendus(Hitachi-Aloka Medical)を用いて体外式超音波下に施行し,心窩部横走査で腹部大動脈波による組織の変形を利用して膵体部の組織弾性情報を計測した.得られた組織弾性情報のうちMEAN(相対ひずみ平均値)と%AREA(低ひずみ領域の占める面積比率)を検討に使用した.検討項目は以下の二つである.(1)慢性膵炎(5例),正常膵(10例)とのMEAN,%AREA値の比較.慢性膵炎5例は膵体尾部切除術が施行され,病理組織学的に確診・準確診所見が得られているものとし,正常膵はEUSにて早期慢性膵炎のEUS所見を有さない症例とした.(2)早期慢性膵炎のEUS所見,EUS所見数とMEAN,%AREA値の関連.
【結果】
(1)早期慢性膵炎,慢性膵炎,正常膵のMEAN値の中央値はそれぞれ69.3,39.3,92.1であり,3群間で有意差がみられた(P<0.01).また,%AREA値はそれぞれ45.3,76.0,26.2であり,MEAN値と同様に3群間で有意差がみられた(P<0.01).(2)早期慢性膵炎のEUS所見数は,蜂巣状分葉エコー6例,不連続な分葉エコー13例,点状高エコー12例,索状高エコー26例,嚢胞4例,分枝膵管拡張2例,主膵管辺縁高エコー18例であった.このうち,蜂巣状分葉エコー,不連続な分葉エコー,点状高エコーは所見陽性群が陰性群と比較してMEANは有意に低値,%AREAは有意に高値であった(P<0.05).EUS所見数とMEAN値との関連を,Spearman順位相関係数を用いて比較すると,ρ=0.59,P<0.01の正の相関がみられた.
【結語】
蜂巣状分葉エコー,不連続な分葉エコー,点状高エコーは組織学的な線維化の程度を反映しているものと思われる.早期慢性膵炎と慢性膵炎,正常膵にはMEAN,%AREA値ともに有意があり,体外式超音波下RTEが早期慢性膵炎のスクリーニングや経過観察に有用な可能性がある.