Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 0.966(2018年)→0.898(2019年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

特別プログラム 消化器
パネルディスカッション 消化器 3 体外式超音波検査による膵スクリーニングの限界と対策

(S335)

膵描出のための走査法 体位とその順番の合わせ技

Visualization method of pancreas

鶴岡 尚志1, 村島 直哉2

Hisashi TSURUOKA1, Naoya MURASHIMA2

1国家公務員共済組合連合会三宿病院診療技術部, 2国家公務員共済組合連合会三宿病院消化器科

1Department of Medical Technorogy, Mishuku Hospital, 2Department of Gastroenterology, Mishuku Hospital

キーワード :

1.ランドマークを使った膵臓各部の同定
膵臓は,頭部から尾部までの長さが16cm程度の横に長い臓器である.超音波での描出の限界は,1断面で描出できる範囲が狭いことに加え,膵臓の手前にある消化管ガスにより視野が途切れるので,一方向の断面やひとつのアプローチでは膵臓全体を観察できないことである.そこでまず,膵臓を頭部,体部,体尾部移行部,尾部の4つの部位に分割して,それぞれの部位を同定するためのランドマーク(目印となる隣接する臓器や血管との位置関係)を理解する必要がある.すなわち,頭部は≪右季肋部縦走査≫で[下大静脈]もしくは[門脈],体部は≪心窩部縦走査≫での[腹腔動脈],体尾部移行部は≪左季肋部横走査≫での[脾静脈]と「胃後壁」,尾部は≪左肋間走査≫での[脾臓・左腎・脾臓静脈]である.これらのランドマークを理解した上で,各部位を描出するのに適切な体位での描出によって,膵臓の描出能が上がる.
2.膵臓各部位ごとの描出に適用すべき体位
体部から尾部にある病変の体位ごとの描出能についての検討では,体部から尾部を見るアプローチとして使われる「半座位での心窩部走査」,「半座位での左肋間走査(経脾走査)」,「右側臥位での左季肋部走査」(以下,「左季肋部走査」と略す),いずれでも「そのアプローチでのみ描出可能な病変」があり,これらの3つのアプローチを併用しないと病変の見落としのリスクがあることが示唆された.1)
さらに,体尾部移行部ついては,心窩部走査あるいは左肋間(経脾)走査では表示される位置が深くなるので,左季肋部走査での描出が不可欠である.
次項で「体尾部移行部から尾部にかけて」(以下「膵尾部」と略す)の描出について述べる.
3.膵尾部描出における胃内ガスへの対処
膵尾部を「浅い位置にはっきりと映す」のは基本的なことではあるが容易ではない.その原因は主に2つある.ひとつは心窩部走査で膵尾部の手前にある消化管内ガスの存在,ふたつ目は膵尾部が深部に描出されることである.
消化管内ガスへの対処は,呼吸による臓器の移動やプローブでの圧迫によるガスの移動が基本的な手技である.加えて胃内のガスについては,体位変換の順番とアプローチを合理的に組み合わせることで,ガスの影響を軽減させて描出精度を上げることができる.
膵尾部を観察する前に,体位変換によって膵尾部の手前にある胃のガスを移動し減量する.具体的には,仰臥位の後で左側臥位にすると,胃体部ないし前庭部にあったガスは,十二指腸に移行し胃腔から減少する.2)この対処の後に膵尾部を観察すると描出条件の改善が期待できる.
4.まとめ
我々は体位変換順の工夫により胃内ガスを減量した後に,右側臥位・左季肋部走査で膵尾部を観察する超音波検査法フォーラム推奨の検査手順を,ルチン検査に適用している.膵尾部の描出範囲が改善するのでスクリーニング検査に必須の手技であるとともに,膵尾部が浅部に描出できることから,高周波プロープでの観察も可能になり,カラードプラや造影超音波で得られる画像情報も安定する.さらに膵臓ばかりでなく門脈系側副血行路,左副腎腫瘍の検出や観察にも応用できる走査法である.体位変換とアプローチの工夫によるシンプルな手技の組み合わせであり,特殊な手技やハイテクな機能を用いる方法ではないが超音波診断へ寄与は大きいと考える.
【参考文献】
1)鶴岡尚志ほか:体位変換による膵体尾部病変描出能の検討−膵嚢胞性病変を利用して−.超音波検査技術(30),2005,4
2)金久保雄樹ほか:左側臥位における胃内ガス減少効果の検討.超音波検査技術(34),2009,258