Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 0.966(2018年)→0.898(2019年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

特別プログラム 循環器
シンポジウム 循環器 4 心機能評価の新たな展開

(S267)

Vector Flow mappingを用いた左房・左室内エネルギー効率に関する検討

Analysis of Left Atrial and Ventricular Energy Efficiency Assessed by Vector Flow Mapping

山本 昌良, 瀬尾 由広, 町野 智子, 石津 智子, 青沼 和隆

Masayoshi YAMAMOTO, Yoshihiro SEO, Tomoko MACHINO, Tomoko ISHIZU, Kazutaka AONUMA

筑波大学循環器内科

Cardiovascular Division, University of Tsukuba

キーワード :

【背景】
Vector Flow mapping(VFM)は心腔内血流の可視化のみならず,血流の持つ運動エネルギーやエネルギー損失,渦流の強さなど,多くの新しい指標を提唱している.心筋の運動は血流にエネルギーを供給し,右心系は肺循環に,左心系は体循環に血流を送り出すことがそれぞれの仕事である.おそらく正常な心臓では,その心筋運動は無駄が少なく効率的な血流動態を作り出していると考えられる.しかし,構造的異常や不整脈が生じることでその効率性が低下している可能性がある.今回の検討では,心房細動症例の左房内血流(検証1),心不全症例の左室内血流(検証2)をそれぞれ対象とし,VFMによって運動エネルギー,エネルギー損失を求め,病的な心臓ではそれらの2つの情報から推定されるエネルギーの効率性がより低下しているか否かの検証を行った.
<検証1>
【方法】
対象は心房細動に対するカテーテルアブレーション術の術前に左心耳内血栓の除外のため経食道心エコー図を施行された連続40症例.90°像にて左房壁全体,左心耳,僧帽弁を含めた画像を取得し,VFMによって左房内血流の解析を行った.通常求められる運動エネルギーに加え,フレーム間の平均運動エネルギー変化を時間差で除して求められる補正運動エネルギーを算出し,エネルギー損失と単位を統一化した.
【結果】
左房壁の全体像を取得できなかった5症例を除外し,35症例(87.5%)を解析対象とした.検査時に17例が洞調律であり,18例が心房細動であった.左房の単位面積で補正した平均運動エネルギー(84±30 vs. 46±25 J/mm3・frame)およびエネルギー損失(60±21 vs. 35±26 J/mm3・s・frame)はいずれも洞調律群で高値を示した.補正運動エネルギーからエネルギー損失を減じて求められる有効エネルギー(生み出されるエネルギーから損失されるエネルギーを減じたエネルギー)は洞調律群で有意に高値であった(853±369 vs. 522±289 J/mm3・s・frame, p=0.006).
【結論】
左房の血流動態において,洞調律では心房細動と比較し,より大きな有効エネルギーが生じている可能性が示唆された.
<検証2>
【方法】
当院にて左脚ブロックもしくは右室心尖部ペーシングに起因する左室非同期に対しCRTが施行された15例を対象とした.Artida(Toshiba)にて左室の三次元心エコー画像を,Prosoundα10(Hitachi-Aloka)にてVFMによる左室内血流のデータをCRT onとoffの状態で比較を行った.左室非同期の指標として16分画におけるQRSの開始からのエリアストレインのピーク値まで時間の標準偏差をAS-SDとして求めた.VFMデータからエネルギーロスと運動エネルギーを心周期における各フレームでの平均値として求めた.左室非同期の指標として16分画におけるQRSの開始からのエリアストレインのピーク値まで時間の標準偏差をAS-SDとして求めた.VFMデータからエネルギーロスと運動エネルギーを心周期における各フレームでの平均値として求めた.
【結果】
AS-SDはCRTによりへ有意な低下を認めた(142±471 to 93±32 ms, p=0.02).AS-SDはエネルギー損失と有意に正相関を示した(r=0.65,p=0.013).運動エネルギー(0.07±0.05 to 0.08±0.05 J/m, p=0.005)はCRTにより優位に増加を示したが,エネルギー損失は変化を認めなかった(0.015±0.010 to 0.016±0.010 J/ms, p=0.32).
【結論】
CRTによる左室の機械的非同期の改善は左室エネルギー効率を改善する可能性が示唆された.