Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 0.966(2018年)→0.898(2019年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

特別プログラム 循環器
シンポジウム 循環器 1 左房評価を心房細動の臨床に活かす

(S254)

心房細動のE/A上昇は左房収縮低下か?左室拡張末期圧上昇か?

Interpretation of Transmitral Flow Velocity Pattern in Patients with Atrial Fibrillation

山田 博胤1, 2, 楠瀬 賢也1, 西條 良仁1, 瀬野 弘光1, 西尾 進2, 山尾 雅美2, 鳥居 裕太2, 平田 有紀奈2, 佐田 政隆1

Hirotsugu YAMADA1, 2, Kenya KUSUNOSE1, Yoshihito SAIJO1, Hiromitsu SENO1, Susumu NISHIO2, Masami YAMAO2, Yuta TORII2, Yukina HIRATA2, Masataka SATA1

1徳島大学病院循環器内科, 2徳島大学病院超音波センター

1Cardiovascular Medicine, Tokushima University Hospital, 2Ultrasound Examination Center, Tokushima University Hospital

キーワード :

心房細動時の僧帽弁口血流速波形には心房収縮期波(A波)がないから,いただいた演題名にある“心房細動のE/A上昇”というのは,もちろん,発作性心房細動の洞調律時,あるいは,心房細動の除細動後の洞調律時の話である.
洞調律例における僧帽弁口血流速波形のE/A比は,左室拡張末期圧上昇の推定に用いられる.すなわち,E/Aが偽正常化パターンあるいは拘束型パターンであると判断されるとき,左室拡張末期圧の著明な上昇が診断される.しかし,この僧帽弁口血流速波形を左室拡張末期圧上昇の推定に利用するには,1)洞調律である,2)有意な僧帽弁疾患がない(僧帽弁狭窄,僧帽弁逆流,僧帽弁輪石灰化など),3)心房のポンプ機能が保たれている,といった前提条件が揃っていることが必要である.また,本波形は,年齢,前負荷,後負荷,呼吸,心拍数など様々な因子に影響を受けるため,判読の際には注意を要する.特に,冒頭に示したような心房細動の既往がある例では,心房ポンプ機能の低下(≒心房心筋の異常)が存在する可能性があり,E/A比が上昇していても左室拡張末期圧が上昇しているとは限らない.つまり,心房ポンプ機能の低下があれば,左室拡張末期圧が上昇しているか,上昇していないかにかかわらず,A波が減高するためE/Aが上昇する.このため,E/Aを左室拡張末期圧の指標として用いることができない.
一方で,心房ポンプ機能が低下している状態で左室拡張末期の著明な上昇が生じると,低下していたA波高がさらに低下する状況(心房機能低下+左室拡張末期圧上昇)もある.
このような病態の鑑別に,心房ポンプ機能を評価することが役に立つ.しかし,左室拡張末期圧が上昇するような病態では左房圧も上昇しているので,上昇した左房圧が左房心筋収縮の後負荷となり,機械的な心房ポンプ機能が一見低下しているように観察される.加えて,上述のごとく両病態が合併していることもある.つまり,仮に心房ポンプ機能が正確に評価できたとしても,2つの病態を鑑別するのはやはり難しい.E/e’や肺高血圧など,他のエコー指標から左室拡張末期圧上昇が診断できれば鑑別に役立つが,判断に苦慮することも少なくない.また,バルサルバ負荷に対するE/Aの変化や,各指標の継時的な変化を観察することは,よい鑑別法の一つである.