Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

特別プログラム 基礎
シンポジウム 基礎 3 超音波治療の臨床応用最前線

(S241)

広範囲キャビテーション援用超音波加熱治療における気泡領域と凝固領域の関係

Relationship between cavitation and coagulation regions induced by HIFU using cavitation bubbles to achieve large-volume coagulation

吉澤 晋1, 神保 勇人1, 高木 亮1, 梅村 晋一郎2

Shin YOSHIZAWA1, Hayato JIMBO1, Ryo TAKAGI1, Shin-ichiro UMEMURA2

1東北大学大学院工学研究科, 2東北大学大学院医工学研究科

1Department of Communications Engineering, Tohoku University, 2Department of Biomedical Engineering, Tohoku University

キーワード :

【目的】
強力集束超音波(HIFU: high-intensity focused ultrasound)を用いた軟部組織の加熱凝固治療では,キャビテーション気泡などの気泡が存在すると超音波加熱が増強されることが知られている.一方で,高強度の超音波伝播により生じた高調波成分は,生体の超音波吸収が基本波よりも大きく,これも超音波加熱増強に寄与する.また,一度のHIFU照射で大きな領域を加熱凝固させると,凝固に使われる熱に対して周囲に拡散される熱の割合が減少するため,加熱効率が向上する.したがって,これらの全てを利用して,広範囲で気泡を援用し,比較的高い瞬時強度のHIFUを照射し続けると非常に高い加熱効率を達成することができることを2014年の本会において報告した.そのため,広範囲にHIFU照射を行う場合,通常の集束超音波焦点を電子走査する方法とワイドビームの超音波を照射する方法で加熱効率を比較すると,前者の方がHIFUの瞬時強度が高く,加熱効率も高くなると考えられる.しかし,高調波成分の影響を考慮して治療計画を立てるには,超音波伝播の非線性の影響を正確に見積もる必要があり,加熱凝固領域を事前に推定することが困難となる.一方,キャビテーション気泡を利用する場合は,気泡領域を超音波イメージングによって可視化することが比較的容易である.そこで本報告では,広範囲でのキャビテーション気泡援用HIFU加熱において,焦点電子走査方法とワイドビーム超音波照射方法による加熱凝固領域とキャビテーション気泡領域の比較をそれぞれ行い,キャビテーション可視化による加熱凝固領域推定の有効性について検討した.
【方法】
キャビテーション気泡を広範囲に発生させるため,直径120 mm,焦点距離120 mm,128素子からなるHIFU用アレイトランスデューサを用い,焦点の電子走査を行った.走査点は,HIFU伝播軸垂直平面内の1辺3 mmの正六角形頂点の6点とした.周波数は1 MHzとし,気泡を発生させるための全音響出力1200 Wの強力かつ短時間の気泡生成用パルスと,40 Wの連続波を,繰り返し周波数7 Hzで12 s照射した.パルス繰り返しの間には2 msのHIFU休止時間を設け,この間に高速超音波イメージングを行った.HIFU照射対象は脱気された鶏胸肉とした.連続波として,通常の集束超音波焦点の電子走査を行う実験とワイドビーム超音波照射を行う実験を行い,HIFU照射中の超音波画像とHIFU照射後の加熱凝固領域の比較を行った.
【結果・考察】
HIFU照射後の加熱凝固領域は,焦点の電子走査を行った方が大きく,超音波伝播の非線形性による高調波成分が加熱増強に有意に寄与していると考えられた.一方で,HIFU照射中に可視化されたキャビテーション気泡領域と加熱凝固領域の一致度は,ワイドビーム照射の方が高く,焦点の電子走査を行った場合はキャビテーション領域よりもHIFU伝播方向に長く凝固領域が生成されていた.結果として,ワイドビーム照射を行った場合は,高速超音波イメージングによるキャビテーション気泡領域可視化を治療領域のリアルタイム推定として用いることが有効であることがわかった.