Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

特別プログラム 基礎
シンポジウム 基礎 1 光と超音波の融合によるイメージングモダリティの新展開(日本超音波医学会光超音波画像研究会との共同企画)

(S232)

光超音波マンモグラフィを用いた乳腺腫瘍における光音響像の形態的特徴に関する検討

Morphological features of photoacoustic images in the breast tumors using the photoacoustic mammography

髙田 正泰1, 山賀 郁1, 片岡 正子2, 金尾 昌太郎2, 川島 雅央1, 3, 浅尾 恭史1, 5, 羽賀 博典4, 椎名 毅6, 富樫 かおり2, 戸井 雅和1

Masahiro TAKADA1, Iku YAMAGA1, Masako KATAOKA2, Shotaro KANAO2, Masahiro KAWASHIMA1, 3, Yasufumi ASAO1, 5, Hironori HAGA4, Tsuyoshi SHIINA6, Kaori TOGASHI2, Masakazu TOI1

1京都大学大学院医学研究科乳腺外科, 2京都大学大学院医学研究科放射線医学講座, 3Department of Oncology, Weatherall Institute of Molecular Medicine, John Radcliffe Hospital, University of Oxford, 4京都大学医学部附属病院病理診断科, 5キヤノン株式会社医用イメージング技術開発センター, 6京都大学大学院医学研究科医療画像情報システム学

1Department of Breast Surgery, Graduate School of Medicine, Kyoto University, 2Department of Diagnostic Imaging and Nuclear Medicine, Graduate School of Medicine, Kyoto University, 3Department of Oncology, Weatherall Institute of Molecular Medicine, John Radcliffe Hospital, University of Oxford, 4Department of Diagnostic Pathology, Kyoto University Hospital, 5Medical Imaging System Development Center, Canon Inc., 6Medical Imaging System Sciences, Graduate School of Medicine, Kyoto University

キーワード :

【背景】
生体内での腫瘍血管の形態的特徴については,これまで十分な検討は行われていなかった.光超音波マンモグラフィ(Photo-acoustic mammography: PAM)は,乳房内のヘモグロビン分布や酸素飽和度に関する情報を高解像度で取得可能であり,かつ極めて侵襲性が低い検査装置である.我々は,乳房を平行平板にて軽度圧迫固定し光音響像を取得する平行平板型PAMを用いて,乳腺腫瘍における光音響像を検討する目的で探索的臨床研究を行ってきた.Bモード超音波像の同時取得や造影MRI像との融合技術の開発は,乳腺腫瘍の位置に基づく腫瘍内外での光音響像の正確な検討を実現可能とした.そこで我々は,PAMで得られた光音響像の形態的特徴を腫瘍組織型別に探索的に検討した.また,平行平板型PAMにおけるアーチファクトや画像の等方性を改良すべく新たに開発した広視野角型PAMにおいて,光音響像の形態的特徴に再現性が認められるか否かを探索的に検討した.
【方法】
対象は,乳腺腫瘍と診断された女性であり,診断時にPAMによる撮像を行った.光音響像での腫瘍位置の同定は,超音波あるいは造影MRIを参照して行った.平行平板型PAMにおいて腫瘍位置が同定可能であった38病変について,腫瘍内外での光音響像の形態的特徴を,腫瘍の組織型別に検討した.5人の医師が独立して読影を行い,所見の有無を多数決で判定した.さらに,広視野角型PAMにおいて,平行平板型PAMで得られた光音響像の形態的特徴に再現性があるか否かを探索的に検討した.本研究は,京都大学医学部附属病院において倫理審査承認を得ている(UMIN000007464,UMIN000012251).
【結果】
平行平板型PAMにおいて検討可能であった浸潤癌31病変のうち,29病変(94%)で腫瘍周辺に腫瘍に向かって求心性に分布する線状の光音響像を認めた.このうち27病変(87%)で腫瘍境界部において光音響像が途絶あるいは先細りする所見を認めた.20病変(65%)で,腫瘍内に光音響像を認めたが,いずれも形態は粒状であり,不均一に分布する傾向にあった.非浸潤癌5病変において,腫瘍周辺に求心性に分布する線状光音響像やその腫瘍境界部での途絶・先細りは,それぞれ3病変(60%),2病変(40%)に認めた.腫瘍内シグナルは4病変(80%)に認め,粒状・不均一な分布を示した.線維腺腫2病変のうち,腫瘍周辺部の光音響像は1病変(50%)に認め,腫瘍内への連続性がみられた.腫瘍内の光音響像は,粒状・網状の形態で分布は比較的均一な傾向にあった.広視野角型PAMにて撮像された浸潤癌・非浸潤癌・線維腺腫病変においても同様の形態を示す傾向が認められた.発表当日は,広視野角型PAMの実際の画像も供覧する.
【結論】
PAMは,高解像度で光音響像を取得可能であるため,光音響像の乳腺腫瘍内外での形態的な検討が可能である.乳腺腫瘍の組織型により,光音響像の形態的特徴が異なる傾向があるが,さらなる症例の集積が必要と考えられる.
【謝辞】
本研究は京都大学・キヤノン協働研究プロジェクトの一環として行われた.