小川 眞広¹, 平山 みどり¹, 高安 賢太郎¹, 三浦 隆生¹, 松本 直樹¹, 中河原 浩史¹, 森山 光彦¹, 杉谷 雅彦², 長沼 裕子⁴, 石田 秀明³

Masahiro OGAWA¹, Midori HIRAYAMA¹, Kentaro TAKAYASU¹, Takao MIURA¹, Naoki MATSUMOTO¹, Hiroshi NAKAGAWARA¹, Mitsuhiko MORIYAMA¹, Masahiko SUGITANI², Yuko NAGANUMA⁴, Hideaki ISHIDA³

¹日本大学病院消化器内科, ²日本大学医学部附属板橋病院病理学教室, ³秋田赤十字病院超音波センター, ⁴市立横手病院消化器内科

¹Gastroenterology, Nihon University Hospital, ²Pathology, Nihon University School of Medicine, ³Center of Diagnostic Ultrasound, Akita Red Cross Hospital, ⁴Gastroenterology, Yokote Municipal Hospital

キーワード :

【目的】
肝腫瘤性病変の鑑別において肝細胞癌の診断が最も重要であるといっても過言ではない．超音波B-mode所見の鑑別のpointとして日本超音波医学会の肝腫瘤の診断基準にも記載されているhaloとmosaic patternがある．この二つの所見は肝細胞癌に特徴的なSignとされ診断根拠となる所見である．これらは肝細胞癌の病理学的な線維性被膜と脱分化した所見と言われている．今回この所見について手術症例において病理所見と超音波所見を再評価したので報告をする．
【対象】
術前に超音波検査を初めとする総合画像診断を施行し治療法として肝切除が施行された54結節を対象とした．
【方法】
使用装置：GEヘルスケア社製LOGIQE9，S8,7，使用探触子：C1-6，C1-5,9L超音波B-mode所見で腫瘍肉眼分類に応じた分類に分けると共にそれぞれの出現率を検討し病理学的所見と比較し出現する状態の考察を行った．腫瘍分化度診断については腫瘍内部を可能な限り組織上の観察を行い腫瘍内部の分化度の割合を検討した．
【結果】
塊状型を除いた腫瘍の平均腫瘍径は23.4cmであり各型の割合と平均腫瘍径は，境界不明瞭型9.4％，7.4mm，単純結節型30.2％，22.9mm，単純結節周囲増殖型20.8％，26.2mm，多結節癒合型35.8％，24.8mm，浸潤型3.8％，37.5mmである．B-mode所見でhaloの出現する割合は単純結節型で62.5％であり単純結節周囲増殖型45.5％，多結節癒合型で5.6％であった．さらに単純結節型で検討すると1mm近くある厚い線維性被膜の占める割合は31.3％に過ぎず，線維性被膜を認めない割合が同等の31.3％であった．37.4％は病理組織学的に線維性被膜を有するのみの薄い被膜を形成するものであった．腫瘍内の組織分化度の検討においては中分化型肝細胞癌3例，高分化型肝細胞癌1例の4例を除く症例では腫瘍内部に複数の分化度の細胞で構成されていた．
【考察】
haloの語源は太陽や月に薄い雲がかかった際にその周囲に光の輪が現れる大気光学現象とされ，超音波用語集では，周辺（辺縁）低エコー帯とされている．今回の検討でも直接線維性被膜を表しているというよりは，周囲への平滑な圧排像で出現する特徴的なSignであることが推測された．またmosaicの語源としては，石・ガラス・貝殻・木などの小片を寄せて作る絵または模様としている．今回の組織学的検討でも複数の分化度の細胞から形成されていることが確認され，線維性隔壁の割合が少なかったことを考えると不均一な内部エコー意味するものと推測可能でこれも肝細胞癌の組織学的な特徴を表しているSignであると考えられた．
【結論】
肝細胞癌のhalo，mosaic patternは肝細胞癌の組織学的な病態を反映した所見であり重要な所見であると考えられた．