Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 0.966(2018年)→0.898(2019年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

特別プログラム 領域横断
パネルディスカッション 領域横断 2 脳神経領域における超音波の使い方

(S206)

経頭蓋カラードプラ像(TC-CFI)の臨床応用の実際

Crinical Application of Transcranial Color Doppler Imaging (TC-CFI)

鮎川 宏之

Hiroyuki AYUKAWA

滋賀県立成人病センター臨床検査部

Department of Clinical Laboratory, Shiga Medical Center for Adults

キーワード :

【はじめに】
TC-CFI(Transcranial Color flow imaging)法は,1989年に古幡らが頭蓋内脳血管の走行をカラードプラ像としてとらえたのが始まりで,28年が経過した.演者は1997年からTC-CFI検査を臨床の第一線で行ってきたが,その後の装置や技術の向上により,20年前と比べるとその臨床的有用性は高まってきている.今回の発表では,TC-CFIの臨床応用についてこれまでの経験を振り返り現在との比較も含めて講演したい.
【側頭骨窓から頭蓋内血管の描出率】
側頭骨窓アプローチにおける頭蓋内血管の描出率の影響は,人種による相違や,骨厚,骨密度などが描出低下の原因であるとされているが,装置の進歩により描出率と血流(カラードプラ)の見え方が改善されてきている.自験例における過去(1997年-2000年)と現在(2011年-2012年)の描出率の比較では,各主幹脳動脈の描出率は約20%向上している.これらは装置のフルデジタル化やプローブの高性能化により装置システムとしての感度が飛躍的に向上したものと考える.しかし描出率においては性別や年齢による問題があり,詳細は講演にて解説する.
【TC-CFI検査でできること】
TC-CFI検査においてできることは以下の3つである.①頭蓋内動脈をカラードプラにて描出できる.②描出した頭蓋内動脈の走行をある程度追うことができる.③パルスドプラ法にて頭蓋内主幹動脈の血流速度を計測することができる.単に描出と計測に終わるのではなく,これらのデータから何を考えるか(どういった病態が考えられるか)を考察することが,この検査のポイントとなる.具体例な臨床応用を以下に列挙する.
①くも膜下出血(SAH)後の脳血管攣縮の予知予防
演者がTC-CFIを始めた頃(2000年前後)の臨床応用は,SAH後の脳血管攣縮の予知予防として行うことが大半で,SAHの攣縮が生じる可能性のある時期は連日の検査を行い,その継時的変化を評価してきた.
②頸動脈ステント留置術(CAS)後の過灌流症候群の早期診断
過灌流症候群とはステント留置により頭蓋内の血流が著しく増えたために問題となる病態であり,時に致命的となることもある.CASが保険適応となった2008年4月以降症例も増えCAS後の過灌流症候群の早期診断などのルーチン検査として利用されている.
③脳梗塞の原因精査で,内頸動脈系や椎骨脳底動脈系の頭蓋内病変が疑われる時や頭蓋外の頸動脈病変が明らかで,その末梢血流(頭蓋内)が,どの様な状態であるかを検索する時に有用である.
④ウイリス動脈輪を構成する血管であるMCA・ACA・PCAの主幹脳動脈の狭窄や閉塞を客観的に評価ができる.
⑤TC-CFIが有用となる疾患として比較的頻度は少ないとは思われるが,脳動静脈奇形(AVM),モヤモヤ病,なども偶発的に発見されることもある.また,脳機能モニターとして定性的ではあるが脳死判定などにも利用されている.
③と④においてはTC-CFI単独で行うことは少なく,頸部血管エコー検査と併用して行うことが多く,我々もこれらを臨床応用として用いている.本日の講演でも実例を提示し解説したい.
【最後に】
経頭蓋超音波検査は海外(欧州)では脳血管障害患者を評価するための基本的な検査手段になっている.しかし日本ではいまだTC-CFIが十分に浸透していない.普及しない理由は様々あるが,冒頭にも述べた通り過去に比べると問題点は改善されて来ている.とくに脳卒中を扱う施設や,頸動脈エコー検査をされている方々はTC-CFIもぜひとも検査に加えていただきたいと思う.