Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 血管
頭部血管 

(S684)

誘引なく発症した総頸動脈仮性動脈瘤の一例

Cryptogenic pseudoaneurysm of common carotid artery

佐藤 和奏1, 渡邊 博之1, 飯野 貴子1, 柳澤 俊晴2, 清水 宏明2, 伊藤 宏1

Wakana SATO1, Hiroyuki WATANABE1, Takako IINO1, Toshiharu YANAGISAWA2, Hiroaki SHIMIZU2, Hiroshi ITO1

1秋田大学大学院医学系研究科循環器内科学・呼吸器内科学, 2秋田大学大学院医学系研究科脳神経外科学講座

1Department of Internal Medicine Division of Cardiovascular and Respiratory Medicine, Akita University School of Medicine, 2Department of Neurosurgery, Akita University School of Medicine

キーワード :

74歳女性.14年前に未破裂右中大脳動脈瘤に対してクリッピング術を施行した既往がある.2014年6月から圧痛を伴う左頚部腫瘤を自覚していた.頚部外傷歴はない.同年8月近医受診し,頚部造影CTで左総頚動脈に動脈瘤を認めたため,9月当院へ紹介,受診した.脳虚血症状は認めず,頚動脈エコー検査では,総頚動脈に短軸像で直径19 x 13 mm,長軸像で長さ28 mmの限局性の仮性動脈瘤が疑われた.血管腔から外側に突出するような形態の偽腔様構造内には血腫が充満し,血腫内には血流信号を認め,最大85 cm/secの流入血流と,何条かの流出血流を認めた.同部血管腔に狭窄または閉塞病変は認めず,その他にも明らかな異常所見は認めなかった.MRIではT1強調画像/T2強調画像で血腫内は低信号を示し血栓化の所見であったが,周囲は一部高信号を示しており,頸動脈エコー所見と同様に血腫内への血流が疑われた.血管造影検査では,第4頚椎の高さで左総頚動脈の血管内腔が腹側に不整に突出し,この近傍の壁内血腫と思われる部分が淡く造影された.以上の所見より,総頚動脈の仮性動脈瘤として,12月動脈瘤切除術および小伏在静脈グラフトを用いて頚動脈再建術を施行した.術後の造影CT,MRIで異常所見は認めず,グラフトの血流も保たれていた.合併症なく経過し,術後12病日に独歩退院となった.
総頚動脈の仮性動脈瘤は比較的まれな病態であり,外傷もしくは医原性に発生することが知られており,血管炎や局所感染が原因になることも報告されている.しかしながら,本症例のように頚部に限局した仮性動脈瘤を,明らかな誘引なく発症することは非常に稀であり,報告は少ない.仮性動脈瘤は破裂の危険を伴い,診断,治療には細心の注意を要する病態であることから,本症例について病理所見を含めて考察する.