Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 血管
頭部血管 

(S682)

高脂血症でのIMT,頸動脈壁弾性特性に対するオメガ3脂肪酸エチルの作用について

Effects of Ethylω3 fatty acid on carotid arterial IMT, elastic modulus and baPWV in dyslipidemia patients

山岸 俊夫1, 長谷川 英之2, 金井 浩3

Toshio YAMAGISHI1, Hideyuki HASEGAWA2, Hiroshi KANAI3

1東北公済病院内科, 2東北大学大学院医工学研究科医工学専攻, 3東北大学大学院工学研究科電子工学専攻

1Department of Internal Medicine, Tohoku Kosai Hospital, 2Department of Biomedical Engineering, Graduate School of Biomedical Engineering, Tohoku University, 3Department of Electronic Engineering, Graduate School of Engineering, Tohoku University

キーワード :

【目的】
オメガ(ω)3脂肪酸エチル(イコサペント酸エチル(EPA),ドコサヘキサエン酸(DHA)は肝臓からTGの分泌を抑制し,さらに血中からのTG消失を促進することによりTGを低下させる効果と肝臓のTG含量を低下させ,脂肪酸・TG合成経路の酵素活性を低下させる効果をもつ.またEPAは抗血小板作用により血栓の生成や血管の壁に付着するのを抑え,血管の弾力性を保つといわれている.今回,EPA・DHA製剤のIMT,頸動脈壁弾性特性,脈波伝播速度(baPWV)などに対する作用ついて検討した.
【方法】
高脂血症を有しスタチンを内服している外来患者38人(平均年齢63才,非糖尿病)にEPA(約930mg)・DHA(約750mg)製剤を内服してもらい,生化学データ,脈波伝播速度(baPWV),中心血圧(cSBP),内膜中膜肥厚(IMT)を12ヶ月間観察した.またうち6人でIMTおよび弾性特性(Eθ)の同時測定を行い,頸動脈エコーにて左右の総頸動脈の各2箇所,Bulbを含まない平坦部分について,合計4箇所を計測部位とした.Eθの計測には位相差トラッキング法(Kanai et al. 2003 Circulation)を用い,IMT計測領域にて測定した.
【成績】
EPA・DHA製剤の投与前後でEPA/AA比は,0.41±0.22であったが,投与後12ヶ月後には0.93±0.18と有意に上昇した(p<0.05).投与前のT-Cho,TG,HDL-C,LDL-C,AST,ALT,GGTP,血圧,脈圧,baPWV,cSBP,IMT,Eθは,195±33 mg/dL,180±82mg/dL,46±11mg/dL,107±23 mg/dL,24±7IU,27±13IU,44±43IU,132±16/79.7±1.9mmHg,56±13mmHg,1725±306cm/sec,135±14mmHg,1.19±0.15mm,301±75kPaであった.EPA・DHA製剤投与12ヶ月後には,TG(-17%)とLDL-C(5%)は有意(p<0.05)に低下,HDL-C(5%)は有意に上昇,血圧(-1%/-1%),脈圧(-3%)は減少傾向であった.cSBP(-4%),baPWV(-4%)は有意に減少,であった.一方,頸動脈エコーでのIMT(-6%)とEθ(-15%)は有意に減少した.また肝機能AST(-7%),ALT(-8%),GGTP(-9%)も有意に改善した.
また血管弾性特性(Eθ)の成分の増分,減分をヒストグラムで解析したところ,薄い部分では,平滑筋の硬さに相当する成分が増えていたことから内皮機能の改善が考えられた.
【結論】
EPA・DHA製剤は,高脂血症患者において,体表からの超音波によるIMTおよび血管弾性特性を有意に変化させた.その機序として,脂質プロファイルや内皮機能の改善を生じうる可能性が示唆された.