Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 血管
静脈1 

(S681)

下肢静脈超音波検査結果とDダイマーの比較検討

Comparative examination of deep vein thrombosis by ultrasound and D-dimer assay

堀 優1, 安田 英明2, 日比 敏男1, 辻 望1, 吉田 路加3, 森田 康弘3, 上杉 道伯3, 坪井 英之3, 曽根 孝仁3

Yu HORI1, Hideaki YASUDA2, Toshio HIBI1, Nozomi TSUJI1, Ruka YOSHIDA3, Yasuhiro MORITA3, Michitaka UESUGI3, Hideyuki TSUBOI3, Takahito SONE3

1大垣市民病院診療検査科形態診断室, 2大垣市民病院血管専門検査室, 3大垣市民病院循環器内科

1Department of Clinical Research, Ogaki Municipal Hospital, 2Vascular Laboratory, Ogaki Municipal Hospital, 3Department of Cardiology, Ogaki Municipal Hospital

キーワード :

【背景】
深部静脈血栓症(以下DVT)を疑う患者に対し,Dダイマー測定によるスクリーニングが一般に行われている.Dダイマーは陰性的中率の高い指標であるが,偽陽性が多いことが欠点である.しかしながら当院ではDダイマー高値となった大半の患者に対して下肢静脈超音波検査が依頼されているのが現状である.
【目的】
超音波検査での血栓所見から,現在用いられているDダイマーの基準値が適切であるかどうか,またDダイマーの値と血栓の進展範囲に関連があるかどうかを検討した.
【対象と方法】
2013年8月から2014年7月に下肢静脈超音波検査を施行した患者のうち,検査前1週間〜当日の間にDダイマーを測定している275例.(男性88人,女性187人,平均年齢73.4歳).
超音波装置はAplio500, AplioXG, AplioXV, Xario(東芝社製),prosound-α10,prosound-α7(日立アロカ社製)を使用した.
検討1:超音波検査結果をDVTの有無および皮下浮腫所見の有無で分類し,対象を下肢静脈血栓を認めない群,以下DVT(-)群,下肢静脈血栓は認めないが皮下浮腫所見を伴う群,下肢静脈血栓を認める群,以下DVT(+)群の3群に分け,Dダイマーの値と比較した.
検討2:DVTの診断に対するROC解析を行い,最適な基準値を後ろ向きに検討した.
検討3:急性期〜亜急性期の血栓があった症例に対し,血栓の存在部位を腸骨型・大腿型・下腿型の3領域に分類した.左右それぞれの各領域に血栓があれば1ポイントとし,その合計ポイントとDダイマーの値を比較した.
【結果】
結果1:全症例中,血栓所見を認めたものは51例であった.Dダイマーの値は,DVT(-)群で平均7.6±14.1,DVT(-)で皮下浮腫所見を伴う群で平均3.0±3.6,DVT(+)群で平均11.1±8.7となった.DVT(+)群はDVT(-)群に比し,有意(p<0.01)に高値を示した.DVT(-)例において皮下浮腫所見の有無では有意差を認めなかった.
結果2:DVTの診断に対するROC解析では,基準値を当院基準の>1.0μg/mlとした時の感度は87.5%,特異度は24.6%,最も感度・特異度が高くなる>4.1μg/mlでは,感度は75.0%,特異度は72.9%となった.
結果3:血栓が最も広い範囲に見られた3ポイントの症例は1例で,右大腿から下腿にかけてと左下腿に血栓を認め,Dダイマーの値は72.0であった.2ポイントの症例は血栓が骨盤〜大腿に広がるもの,大腿〜下腿領域に広がるもの,両側の下腿に存在するものが10例あり,Dダイマーの値は平均5.4±4.6であった.1ポイントの症例は血栓が大腿もしくは下腿に存在するものが27例で,Dダイマーの値は平均16.5±12.6であった.
【考察】
DVT(+)群でDダイマーが2.0μg/ml以下であったものは,器質化した血栓や下腿領域の血栓を有する症例であった.急性期・亜急性期で膝上の血栓の検出に限定すれば,基準値をさらに上げることも可能と考えられる.
血栓の存在する範囲によってDダイマーの値に傾向は見られなかった.これは,今回の分類方法では同じ1ポイントでも血栓量に差があることや,同量の血栓でも器質化の程度が異なることが原因と考えられる.
【結語】
今回の検討では現在のDダイマーの基準値は必ずしも適切ではないと思われた.
Dダイマーの値と血栓の進展範囲には傾向が見られなかった.