Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 腎泌尿
腎泌尿器1 

(S674)

Male LUTSと前立腺超音波診断

Male LUTS and transrectal ultrasound

小島 宗門1, 矢田 康文1, 吉田 和彦1, 小倉 剛1, 早瀬 喜正2

Munekado KOJIMA1, Yasufumi YADA1, Kazuhiko YOSHIDA1, Tsuyoshi OGURA1, Yoshimasa HAYASE2

1名古屋泌尿器科病院泌尿器科, 2丸善クリニック泌尿器科

1Department of Urology, Nagoya Urology Hospital, 2Department of Urology, Maruzen Clinic

キーワード :

【目的】
排尿困難や頻尿といった下部尿路症状を訴えて受診する高齢男性患者(Male LUTS)は,前立腺肥大症(BPH)として治療されることが多いのが現状である.しかし,前立腺の状態を正確に把握したうえで,治療を行なうことはより重要であると考えられる.そこで,当院を受診したMale LUTSを対象に,経直腸前立腺超音波検査(TRUS)を実施し,BPHの超音波診断という観点から検討したので報告する.
【対象・方法】
50歳以上の男性で,LUTSを主訴に受診した患者で,すでにα1遮断薬,抗コリン薬,抗男性ホルモン薬等による治療を受けている患者や前立腺癌,膀胱結石等の患者を除外した,1499例を検討対象とした.年齢は50歳から89歳,平均66.0±8.7歳であった.全例で,椅子式経直腸的ラジアル走査専用装置を用いてTRUSを行なった.TRUSでは,前立腺容積(PV),TZ容積(TZV)およびTZ index(TZV/PV)を求めた.TRUSの所見(横断面の形態変化およびTZ状態等)から,BPHの有無を判定した.
【結果】
対象となった1499例のうち,TRUSでBPHと診断されたのは690例で,全体の46%であった.年代別のBPHの頻度は,50-60歳,60-70歳,70-80歳,80歳以上で,それぞれ24%,53%,56%,43%で,60歳以上の患者においては,BPHの頻度と年齢との関係は明らかではなかった.BPHの頻度は,PVが増大するに従い高くなり,20mL未満,20-30mL,30-40mL,40-50mL,50mL以上で,それぞれ12%,48%,90%,97%,98%であった.同様にTZ indexが増大するに従いBPHの頻度も高くなり,0.2未満,0.2-0.3mL,0.3-0.4mL,0.4-0.5mL,0.5mL以上で,それぞれ4%,22%,71%,96%,98%であった.
【考察】
今回の検討により,Male LUTSにおいては,TRUSで形態学的にBPHと診断された頻度は,半数未満の46%に留まることが判明した.最近では,BPHの診断,あるいはMale LUTSの診断過程において,TRUSが用いられる頻度はかなり低く,経腹超音波によるPV計測によりBPHの診断を行なっている施設が多いのが現状である.前立腺の大きさ(PV)を根拠にBPHの有無を診断すると仮定すると,BPHの陰性診断のためには20mL,陽性診断のためには30mLといカットオフ値が妥当と思われるが,全体の37%を占めている20-30mLの患者においてはその正確な診断は困難である.一方,TZ indexを用いる場合には,0.3がカットオフ値として利用でき,TZ indexがBPH診断に有用である可能性が示唆されたが,経腹超音波ではその計測は困難である.Male LUTSの診断におけるTRUSの有用性を改めて認識する結果であった.Male LUTSがQOL diseaseであり,症状中心の診断体系となるのは当然ではあるが,少なくとも泌尿器科専門医にあっては,前立腺の状態を正確に把握し,患者にも正確に伝え,それを基に治療方針を決定することはさらに重要であり,泌尿器科専門医の責務である.
【結論】
Male LUTSの診断に際しては,TRUSは必須の診断ツールであり,改めてその普及が望まれる.