南方 瑞穂, 高澤 まゆか, 金子 千束, 山本 浩之, 重田 真幸, 大黒 晴美, 貴田岡 正史

Mizuho MINAKATA, Mayuka TAKAZAWA, Chiduka KANEKO, Hiroyuki YAMAMOTO, Masayuki SHIGETA, Harumi DAIKOKU, Masahumi KITAOKA

公立昭和病院内分泌・代謝内科

Endocrinology, Shouwa Government Hospital

キーワード :

【背景】
近年，結節性甲状腺腫の良悪性鑑別に，甲状腺の組織弾性評価が臨床応用されている．Manual Compressionでひずみを与え，そのひずみを画像化するStrain Elastographyでは，用手的圧迫による外部入力の不均一さや，組織間のズレによるアーチファクト等が評価画像に影響を与えるため，施行者の技能に強く依存する．また，外部入力の適正さを評価する定量性を含めた直接的指標も存在しない．一方，プローブからのAcoustic Compressionで生じる剪断弾性波の伝播速度を測定して画像を構築するShear Wave Elastographyでは，施行者のプローブ操作による影響は軽減され，再現性の高い画像を得ることができる．また，これまでは適正な画像構築や定量性に大きい影響を与えるShear Waveの屈折，反射，減衰等の評価は極めて困難であったが，剪断波の伝播を到達時間等高線により可視化する機能（Propagation）により検証することが可能となった．今回，Strain ElastographyとShear Wave Elastographyの双方で結節性甲状腺腫を検索し，画像と定量性の比較検討を行った．
【方法】
結節性甲状腺腫5症例について，東芝社製Aplio 500を用い，各症例で同機に実装されたStrain ElastographyとShear Wave Elastographyを施行し，弾性イメージングの確認と，1から3か所でStrain Ratio及び剪断弾性波速度の比を測定した．また，全例で穿刺吸引細胞診を施行した．
【結果】
5例全ての結節で，組織弾性イメージングおよび，Strain Ratioと剪断弾性波速度比の相似性を認めた．Shear Wave ElastographyではROIの設定後にワンタッチで弾性イメージングが表示されるため特別な手技が不要であり，操作性と再現性に優れていた．穿刺吸引細胞診では，classⅡもしくはclassⅢであり，Bモード，ドプラによる血流評価を合わせて，臨床診断は全例腺腫様甲状腺腫と診断した．
【結論】
今回検討したStrain ElastographyとShear Wave Elastographyとでは，同一甲状腺結節において得られる正常甲状腺組織との比較による弾性評価に相違は認めなかった．画像の再現性が高く，Propagationにより剪断波の伝播状態を確認することでイメージングの信頼性を評価できる点で，Shear Wave Elastographyは臨床的に有用と考えられた．