金澤 真作¹, 齊藤 芙美¹, 尾作 忠知¹, 久保田 伊哉¹, 馬越 俊輔¹, 片岡 明美¹, 寺原 敦朗², 渋谷 和俊³, 緒方 秀昭¹

Shinsaku KANAZAWA¹, Fumi SAITO¹, Tadatoshi OSAKU¹, Yorichika KUBOTA¹, Syunsuke MAGOSHI¹, Akemi KATAOKA¹, Atsurou TERAHARA², Kazutoshi SHIBUYA³, Hideaki OGATA¹

¹東邦大学医療センター大森病院乳腺・内分泌外科, ²東邦大学医療センター大森病院放射線科, ³東邦大学医療センター大森病院病理診断科

¹Depertment of Breast and Endocrine Surgery, Toho University Omori Medical Center, ²Department of Radiology, Toho University Omori Medical Center, ³Department of Pathology, Toho University Omori Medical Center

キーワード :

【はじめに】
乳癌術前化学療法による腫瘍内部の血流状態の変化を造影超音波から得た時間輝度曲線のdataを用いた検討を行ってきた．解析は，得られたrow-dataあるいはvideo-dataを用いて行うが，row-dataを解析できる診断機器は限られている．症例間の造影強度の比較は困難であるが，特にvideo-dataでは診断機器によるポストプロセスの影響により輝度の比較が困難となる．今回，診断機器や扱うdataの種類に依存せず異なる検査間での比較が可能な，造影剤の腫瘍への流入を開始から輝度のpeakに達するまでの時間（time to peak）を検討のparameterとした．Time to peakは腫瘍内圧や腫瘍内部の血管抵抗，血流速度を反映していると考えている．
【目的】
乳癌術前化学療法前後の腫瘍径の変化率とtime to peakの変化率の関連性を化学療法の組織学的効果と比較検討する．
【対象と方法】
対象は，2008年1月から2014年5月までにFEC（EC）→Doc±Trで術前化学療法を施行された25症例．全例女性で，年齢中央値49歳（39〜78歳）．最大腫瘍径は，平均36mm（20〜101mm）．luminal type 8症例，luminal HER2 type 3症例，HER2 type 7症例，triple negative type 7症例だった．造影MRI（CT）で計測した治療前後の腫瘍径の変化と治療開始から2か月おきに行った造影超音波から得たtime to peakの変化率をSpearmanの順位相関係数を用いて検討した．
【結果】
術前化学療法の組織学的効果は，Grade 1a〜2bが17症例，Grade 2b, 3が8症例だった．治療開始後2か月目のまでのtime to peakの変化率と腫瘍径の変化率に相関が見られた．Luminal typeでその傾向が強かった．その後の経過time to peakの変化と腫瘍径の変化率には関連は見られなかった．HER2 typeではtime to peakの変化率と腫瘍径の変化率に関連が見られなかった．ただし，いずれも有意差は見られなかった．
【まとめ】
乳癌術前化学療法による腫瘍径の変化率とtime to peakの変化率には関連あると思われた．特にLuminal typeでは，治療開始後早期に腫瘍内血管抵抗が低下することと腫瘍縮小効果には関連がある可能性が考えられた．ただし，術前化学療法の組織学的効果と腫瘍の縮小率に関連を認めなかった．今後，症例の蓄積し，他のparameterでの検討も必要である．