Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 乳腺
乳腺造影 

(S665)

乳癌微小転移リンパ節検出のための造影超音波定量解析法確立

Quantitative analysis of contrast-enhanced ultrasound to detect early lymph node metastasis in clinicaly node-negative breast cancer

工藤 由美子1, 三木 未佳1, 船水 康陽1, 三木 俊1, 森 菜緒子2, 嶋内 亜希子2, 高瀬 圭2, 伊藤 康一3, 小玉 哲也4

Yumiko KUDO1, Mika MIKI1, Yasyharu FUNAMIZU1, Takashi MIKI1, Naoko MORI2, Akiko SHIMAUCHI2, Kei TAKASE2, Kouichi ITOU3, Tetsuya KODAMA4

1東北大学病院生理検査センター, 2東北大学大学院医学研究科放射線診断科, 3東北大学大学院情報科学研究科, 4東北大学大学院医工学研究科

1Clinical Physiology Center, Tohoku University Hospital, 2Diagnostic Radiology, Tohoku University Graduate School of Medicine, 3System Information Sciences, Tohoku University Graduate School, 4Biomedical Engineering, Tohoku University Graduate School

キーワード :

【目的】
現在,乳癌の腋窩リンパ節転移は,CT,MRI,超音波では診断能が低いため,術中センチネルリンパ節生検に診断がゆだねられている.マウスの動物実験の造影超音波ではサイズや形状に変化が出現する前に,リンパ節内部の造影体積比が上昇し,転移の有無の鑑別が可能なことが報告されている.本研究の目的は,in vivoでリンパ節の造影方法を確立し,微小転移の診断能を確認することである.
【方法】
本研究は東北大学倫理委員会で承認されており,すべてのボランティア,患者でインフォームドコンセントを取得した上で行った.2014年1月から12月にボランティア11例,乳癌症例13例において腋窩のリンパ節に対し造影超音波を行った.使用装置は東芝社製Aplio500,PLT-704SBT.MI値0.2前後.使用造影剤はソナゾイド®,投与量は0.015ml/kg.ボランティアは,乳癌,サルコイドーシス,リンパ腫やその他の癌の既往のない健常者を対象とした.乳癌症例は,視触診およびCT,MRI,非造影の超音波で転移を疑うリンパ節を検出しない,臨床的リンパ節転移陰性症例を対象とした.造影剤投与方法は,7例で10倍希釈と1倍希釈投与を行い,造影効果の比較を行った.撮像は造影剤を投与後連続して75秒間の動画取得を行った.DICOM画像をPCに移し,解析にはMATLAB2014を使用した.
【結果】
ボランティアおよび乳癌症例で造影剤投与による副作用はなく,全例でリンパ節が描出され,動画画像が取得できた.投与量は10倍希釈では造影効果が乏しく,定量解析による時間面積比曲線も不安定で,1倍希釈投与が妥当であった.リンパ節の長径はボランティア11.2±3.6mm,乳癌症例13.2±5.1mm(p=0.39),有意差を認めなかった.皮質の最大径はボランティアリンパ節2.1±1.2mm,乳癌症例2.3±1.2mm(p=0.38)で有意差を認めなかった.乳癌患者13例のリンパ節のうち2例では病理学的に転移を認めた.それぞれ長径および皮質の最大径は8.6mm,11.5mmと2.4mm,1.7mmで,転移の指摘は困難であった.造影超音波では1例は視覚的には転移指摘は困難であったが,1例は皮質の一部に造影欠損があるように見えた.時間面積比曲線を算出したところ,いずれのリンパ節も30から40秒の間に最大面積比を認め,その後面積は漸減した.40から50秒の平均面積比を比較するとボランティアおよび非転移リンパ節は5.3-43.9(20.6)%,転移リンパ節はそれぞれ39.9,19.7%であった.リンパ節内のピクセル毎のバブル通過回数を計算し,カラーマップを作成したところ,ボランティアおよび非転移リンパ節では,リンパ門側に通過回数の多い領域を認めたが,皮質側に通過回数の多い領域は認めなかった.2例の転移リンパ節で皮質側に通過回数の増加領域と通過回数の減少領域を隣接して認めた.
【考察】
リンパ節造影定量解析において,造影剤は1倍希釈が妥当であった.ボランティアと非転移リンパ節は非常に血流が豊富であった.微小転移部は乳癌の元来組織と類似していると考えると,相対的に造影効果が低下した領域として描出されたと考えられた.転移領域に隣接して造影剤通過回数増加領域を認めたことから,転移に伴う隣接した正常な血管の拡張を捉えた可能性を考えた.この2つの所見が微小転移部を示唆する所見と思われるが今後症例を追加し,診断の妥当性を検討する予定である.