Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 乳腺
乳腺症例 

(S663)

乳房内転移を来した子宮平滑筋肉腫の1例

A case of leiomyosarcoma of the uterus metastasizing to the breast

本田 麻里子, 尾浦 正二, 吉増 達也, 粉川 庸三, 川後 光正, 清井 めぐみ, 宮坂 美和子, 西口 春香, 大橋 拓矢, 岡村 吉隆

Mariko HONDA, Syoji OURA, Tatsuya YOSHIMASU, Yozo KOKAWA, Mitsumasa KAWAGO, Megumi KIYOI, Miwako MIYASAKA, Haruka NISHIGUCHI, Takuya OHASHI, Yoshitaka OKAMURA

和歌山県立医科大学第一外科

Department of Thoracic and Cardiovascular Surgery, Wakayama Medical Univeristy

キーワード :

【はじめに】
子宮平滑筋肉腫は,全子宮悪性腫瘍の約1〜5%と比較的稀な腫瘍で,予後不良な腫瘍の1つである.今回乳房腫瘤治療中に初めて指摘された,子宮平滑筋肉腫,乳房内転移の一例を経験したので報告する.
【症例】
60歳代の女性.40歳代で子宮筋腫を指摘されたが,その後婦人科は受診していなかった.2014年5月,左乳房腫瘤を主訴に当科を受診した.初診時には,視触診で左C領域に約3cm大の可動性良好な腫瘤を触知したが,腋窩リンパ節は触知しなかった.マンモグラフィー検査では,左M,OI領域に境界明瞭な3.1cm大の高濃度腫瘤を認め,カテゴリー4と判定された.超音波検査では,左12時方向に29×29×19mm,内部は低エコーで不均質な境界明瞭,平滑な腫瘤を認めた.前方境界線の断裂を認めず,後方エコーは増強,縦横比は高く,血流豊富な楕円形腫瘤であり,カテゴリー4と判定した.超音波所見からは,solid−tubular carcinomaが疑われた.
針生検では,Invasive ductal carcinoma,solid−tubular carcinoma,(g),NG3,HGⅢ,(ly(−),v(−)),ER−,PgR−,Her2/neu score0,Ki−67 LI50%の診断であった.
【経過】
2014年6月,病理組織結果より術前化学療法の適応と判断し,weeklyアブラキサン®を施行した.2014年7月,4コース施行後の超音波検査にてPDと判断したため,FEC100にレジメンを変更した.化学療法への反応が乏しいためPET/CTを施行したところ,左乳房のSUVmax=6.01の集積を伴う33mm大の腫瘤以外に,子宮体部にもSUVmax=5.12の集積を認めた.またその他に肝臓,肺にもFDG集積を認め,乳癌からの肝・肺・子宮転移が疑われた.
FEC100を2コース施行後の超音波検査で,乳房腫瘤に関してはSDと判断し,婦人科に紹介.子宮体部の腫瘍は悪性の可能性が高く,原発巣である可能性も否定できないとの判断となり,2014年9月,乳房切除術,単純子宮全摘術および両側付属器摘出術を同時施行した.
術後の病理組織診断では,子宮腫瘍は子宮平滑筋肉腫,乳房腫瘤は子宮平滑筋肉腫の乳房転移と診断された.術後補助療法としてGD療法を施行し,現在まで再発は認められていない.
【考察】
超音波所見では,典型的なsolid−tubular carcinomaのパターンであり,針生検の病理組織結果からも同様の診断を得たため,術前化学療法を施行することとなった.原発性乳癌では,腫瘍径が5cm未満で,臨床的にリンパ節転移が陰性の場合,PET/CT等による全身検索の必要性は乏しいとされている.しかし本例のように,圧排性発育を来すtriple negative乳癌の場合は,きわめて稀ではあるが乳房内転移の可能性もあるため,初診時より全身検索を施行することも考慮することが望まれると考えられた.