Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 産婦人科
流早産・分娩 

(S652)

全前置胎盤合併子宮内胎児死亡症例に対し3次元超音波検査にて待機的管理を行った一例

Management of fetal death with placenta previa

辻本 麻美, 田中 和東, 松木 厚, 札場 恵, 松木 貴子, 和田 夏子, 西本 幸代, 中村 博昭, 中本 收

Asami TSUJIMOTO, Kazuharu TANAKA, Atsushi MATSUKI, Megumi FUDABA, Takako MATSUKI, Natsuko WADA, Sachiyo NISHIMOTO, Hiroaki NAKAMURA, Osamu NAKAMOTO

大阪市立総合医療センター産科

Departmet of Obstetrics, Osaka City General Hospital

キーワード :

【緒言】
前置胎盤における子宮内胎児死亡症例の管理方法は確立されておらず,今回我々は,妊娠24週において子宮内胎児死亡及び全前置胎盤と診断し,死胎児症候群発症に留意しつつ,3次元超音波検査にて子宮・胎盤血流の評価を行いながら待機療法を行い無事経腟分娩に至った一例を経験したので報告する.
【症例】
40歳,1経妊0経産.自然妊娠成立.他院にて妊娠管理されていたが,妊娠24週2日,胎動減少を主訴に前医を受診したところ,子宮内胎児死亡と診断.全前置胎盤及び子宮筋腫合併のため,同日当院母体搬送となった.来院時の経腟超音波所見上,子宮体下部に最大径2.5cm前後の筋層内筋腫を複数認め,子宮腺筋症様で全体に腫大していた.また胎盤は後壁主体で,内子宮口より3cm被覆しており,全前置胎盤と診断した.胎盤付着部と子宮頸部にsonolucent zoneの消失は認めず,明らかな癒着胎盤の所見は認めなかった.豊富な子宮胎盤血流を認めたため,帝王切開や陣痛促進剤による早期介入を行わず,血流低下と自然娩出を期待し,待機的に管理する方針となった.死胎児症候群による血液凝固異常に十分に注意しながら,定期的に凝固機能検査を行い,血液検査による感染兆候の有無,血中HCG,子宮胎盤血流の指標として,経腹3次元超音波検査による子宮体下部の血流指数を経時的に評価した.入院時の血中HCG:5065mIU/mlで,経腹3次元超音波所見での血流指数は,Vascularization Index(VI):67.8(%),Flow Index(FI):32.1(%)であった.経過観察中や分娩時の大量出血に備えて自己血400mlを貯血した.血液検査所見では,血液凝固異常及び感染兆候を認めず,HCG及び3次元超音波血流指数の低下を認めた.子宮内胎児死亡診断から27日後に,自然流産の兆候と考えられる性器出血を認めた.血中HCG:324.7mIU/ml,VI:18.9(%),FI:17.2(%)と著明な低下を認めた.翌々日よりプレグランディン腟坐剤を用いて分娩誘発を行い,同日胎児及び胎盤を娩出した.分娩第3期までの出血量は130g,分娩1時間後の出血量は100gで,翌日軽快退院となった.娩出児より子宮内胎児死亡の原因としては臍帯過捻転が考えられた.
【まとめ】
前置胎盤における子宮内胎児死亡に対し,血液凝固異常,感染兆候に十分に留意し,3次元超音波検査の血流指数を指標として待機的管理を行うことによって,不必要な帝王切開術や,早期治療介入を原因とした大量出血を回避することが可能で,安全な経腟分娩が行えると考えられた.