Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 産婦人科
胎児異常③ 

(S643)

胎児大腿骨の短縮弯曲と家族歴から本人および同胞の遺伝性骨形成不全症が診断された例

Example osteogenesis imperfecta was diagnosed of person and compatriots from shortening bowing of fetal femur and family history

瀬戸 理玄, 松本 泰弘, 梁 栄治, 櫻井 理奈, 岸本 倫太郎, 鎌田 英男, 木戸 浩一郎, 綾部 琢哉

Michiharu SETO, Yasuhiro MATSUMOTO, Eiji RYO, Rina SAKURAI, Rintarou KISHIMOTO, Hideo KAMATA, Koichiro KIDO, Takuya AYABE

帝京大学医学部附属病院産婦人科

Obstetrics and Gynecology, Teikyo University Hospital

キーワード :

【はじめに】
骨形成不全症(osteogenesis imperfecta;OI)は,骨系統疾患の中でも頻度の高いもののひとつである.従来の分類では,臨床像と遺伝学的観点に基づいたSillence分類によってⅠ型からⅣ型に分類されてきた.しかし近年の研究により,原因遺伝子の異なるⅤ型からⅦ型までのOIが新たに分類されている.
発生頻度はⅠ型からⅣ型を合わせて5万人に1人程度との報告がある.Ⅰ型は青色強膜と比較的軽い骨変化を示し,乳幼児期の易骨折性によって診断されることが多い.出生前に診断されることは稀だが,骨化の遅れのために骨のエコー輝度の低下が認められることがある.IV型は白色強膜を呈し,一般に軽症だが,症状の幅は広く,子宮内骨折を認める例もある.IV型も出生後に発見されることが多いが,胎児期に単発性の骨折や長管骨の軽度の弯曲で気付かれることもある.今回我々は,胎児超音波検査によって大腿骨の弯曲や家族歴から,出生前にOIⅠ型またはⅣ型を疑い,出生後に確認された1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.
【症例報告】
28歳1回経産婦(前回39週0日,経腟分娩,2,796g).妊娠初期から他院で妊婦健診を受診していた.
大腿骨長(FL)が24週6日で35.9mm(-2.57SD)と短く,弯曲も認めたため精査目的に当院紹介受診となった.
当院初診時の26週5日,胎児超音波検査で右FL 42mm(-1.62),左FL 44mm(-0.95SD)で,大腿骨の弯曲を認めた.BPD・APTD・TTDは正常であった.その他の長管骨の所見から,下肢のRhizomelic typeの長管骨短縮であると考えられた.その後,BPD,APTD,TTDは成長を認めており,FLは-2.0から-3.0SD程度で推移していた.詳細な家族歴の問診により父と祖父の低身長(それぞれ151cm,150cm未満)があることが判明した.また,同胞兄が2歳時に右下肢骨折を指摘されていることも明らかとなった.
軟骨無形成症を積極的に疑わせる所見は認めず,低身長の家族歴,同胞の易骨折性の疑い,大腿骨長の短縮・弯曲から,常染色体優性遺伝性骨形成不全症Ⅰ型またはⅣ型の同胞内発症を疑った.
妊娠38週6日に自然陣痛発来し経腟分娩に至った.児は2,370g,Apgar score 9/10,UApH 7.314,女児.両股関節の開排制限を認めたためX線検査を施行したところ,股関節脱臼は認めなかったが,両側大腿骨の弯曲は明らかであり,他院で精査を行うこととなった.
他院受診の段階で青色強膜は認めなかった.しかし,同胞兄が小児科で青色強膜を指摘され,家族歴に低身長があることから,青色強膜があればSillence分類のⅠ型,なければⅣ型と考えられた.これについては今後の経過を追って評価することとなっている.
【考察】
本症例は,胎児超音波検査により大腿骨弯曲と短縮を認め,詳細な超音波検査および家族歴聴取から出生前に骨形成不全症を疑い,同時に同胞の診断にも繋がった1例である.
骨系統疾患の種類によっては近年,早期対応によるQOL改善の可能性が指摘されている.
骨系統疾患を疑った場合,軽症例は家族内で確定診断に至らずに経過している場合があることを念頭におき,詳細な家族歴の聴取をすることが重要であると考えられた.