井ケ田 小緒里^{1, 2}, 原田 文¹, 室本 仁^{1, 3}, 水内 将人^{1, 4}, 室月 淳^{1, 3}, 八重樫 伸生²

Saori IGETA^{1, 2}, Aya HARADA¹, Jin MUROMOTO^{1, 3}, Masahito MIZUUCHI^{1, 4}, Jyun MUROTUKI^{1, 3}, Nobuo YAEGASHI²

¹宮城県立こども病院産科, ²東北大学産婦人科, ³東北大学大学院医学系研究科先進成育医学講座胎児医学分野, ⁴札幌医科大学産婦人科

¹Obstetrics, Miyagi Children’s Hospital, ²Gynecology and Obstetrics, Tohoku Uninersity, ³Department of Advanced Fetal and Developmental Medicine, Tohoku University Graduate School of Medicine, ⁴Obstetrics and Gynecology, Sapporo Medical University

キーワード :

【目的】
Cystic hygromaは胎児の頚部を中心に認める嚢胞性腫瘤であり，胎生期のリンパ管の合流異常によって発生し，染色体異常との関係も指摘されている．近年の超音波技術向上により妊娠初期での診断例は増加しており，外来で見つかったときの対応に苦慮することも多い．今回われわれは，当院でcystic hygromaと診断された胎児の予後について検討し，文献的考察も加えて報告する．
【対象と方法】
2011〜2014年に当院でcystic hygromaと診断された11例を対象とした．同時期の当院での分娩は1513例であった．診断後の検査の選択，妊娠経過，染色体異常の有無，新生児の予後について検討した．
【結果】
11例のうち，非免疫性胎児水腫（NIHF）が4例，多発奇形は2例に合併していた．羊水あるいは絨毛による染色体検査をおこなった8例中2例に染色体異常を認めた（ターナー症候群1例，18トリソミー1例）．子宮内胎児死亡が5例，人工妊娠中絶を行った例が3例であった．生児を分娩した3例では，後頚部浮腫の残存以外は正常だった例が1例，左多発性異形成腎，両母趾内反，翼状頚が1例，Cornelia de Lange症候群が1例であった．
【結語】
妊娠中期までにみつかったcystic hygromaの多くは胎児水腫をともない，生命予後も不良なものが多かった．染色体異常も半数近くに認められた．染色体が正常で生命予後が良好でも複数の奇形を合併する例があるため，出生前に系統的な精査が必要となると考えられた．Cystic hygromaは原因・予後ともに症例によりそれぞれの経過をたどる．健児を得られることもあるが，予後は比較的不良な場合も多いので，cystic hygromaと診断した場合にはそれぞれの症例に対し個別に検討し，できるだけ正確な情報を患者・家族へ提供していくことが産婦人科医の役目と考える．