Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 産婦人科
胎児異常② 

(S641)

当院で胎内診断した多嚢胞性異形成腎症例の周産期および小児期臨床像に関する検討

Sonographic findings and perinatal / postnatal outcomes of Multicystic dysplastic kidney

春日 義史1, 宮越 敬1, 福武 麻里絵1, 正木 繭1, 落合 大吾1, 松本 直1, 峰岸 一宏1, 粟津 緑2, 田中 守1

Yoshifumi KASUGA1, Kei MIYAKOSHI1, Marie FUKUTAKE1, Mayu MASAKI1, Daigo OCHIAI1, Tadashi MATSUMOTO1, Kazuhiro MINEGISHI1, Midori AWAZU2, Mamoru TANAKA1

1慶應義塾大学医学部産婦人科, 2慶應義塾大学医学部小児科

1Obstetrics and Gynecology, Keio University, 2Pediatrics, Keio University

キーワード :

【緒言】
多嚢胞性異形成腎(multicystic dysplastic kidney: MCDK)は,胎児超音波スクリーニングを契機に検出される腎泌尿器系疾患の1つである.出生後,自然退縮する予後良好例が多い一方で,両側腎罹患の場合には無羊水症を生じ致死性とされる.今回,我々は当院で胎内診断したMCDK症例の臨床像を検討した.
【方法】
対象は2010年1月から2014年10月までに当院で胎児超音波検査を施行し周産期管理を行った12例である.母体背景,胎児超音波検査所見,周産期予後,出生後腎機能およびMCDK退縮の有無について後方視的に検討した.
【結果】
母体年齢(中央値)は31.5歳(範囲:22-39歳),妊娠形式は人工授精の1例を除いて全例で自然妊娠であった.MCDKの診断時期(中央値)は妊娠23週(範囲:18-34週),両側性が2例,片側性が10例(左4例,右6例)であり,8例は女児であった.両側性2例と対側腎無形成であった1例では無羊水症を呈し,妊娠中断が選択された.なお,両側性2例中1例には心内構築異常の合併を認めた.妊娠継続となった9例中2例は対側腎に尿管膀胱移行部狭窄に伴う水腎症を合併したが羊水過少を呈することはなかった.他院で分娩となり転帰が不明である2例を除いた生産7例における分娩週数(中央値)は妊娠37週(範囲:36-41週)であった.なお,1例は食道閉鎖,鎖肛,骨盤低形成,下肢低形成を合併し,生後VACTERL連合と診断された.当院小児科通院中である5例における年齢(中央値)は1歳(範囲:0.5-3歳)で腎機能は全例正常であり,うち2例では経過観察中に罹患腎が退縮した.
【結語】
自験例では片側性発生が多く,予後良好であった.ただし,片側性であってもVACTERL連合など多発奇形症候群の一表現型としてMCDKが検出されることもあり,合併奇形の有無を検索することも重要と考えられた.また,自験例において出生後の腎機能は正常であるものの生後早期のMCDK退縮例は少なかったことから,定期的な経過観察が必要と考えられた.