Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 産婦人科
胎児異常① 

(S636)

妊娠中期のvenous pouchを契機に胎内診断が可能であった脳硬膜静脈洞奇形の一例

Prenatal features of dura sinus malformation with thrombosis

福武 麻里絵1, 宮越 敬1, 三輪 点2, 春日 義史1, 正木 繭1, 落合 大吾1, 松本 直1, 峰岸 一宏1, 田中 守1

Marie FUKUTAKE1, Kei MIYAKOSHI1, Tomoru MIWA2, Yoshifumi KASUGA1, Mayu MASAKI1, Daigo OCHIAI1, Tadashi MATSUMOTO1, Kazuhiro MINEGISHI1, Mamoru TANAKA1

1慶應義塾大学医学部産婦人科, 2慶應義塾大学医学部脳神経外科

1Department of Obstetrics and Gynecology, Keio University School of Medicine, 2Department of Neurosurgery, Keio University School of Medicine

キーワード :

【緒言】
脳硬膜静脈洞奇形(Dural sinus malformation:DSM)は胎生期における横静脈洞の拡張が病的に進行・残存する疾患である.DSMでは動静脈瘻合併による心不全やvenous pouch内の血栓形成によりKasabach-Merritt現象を生じることがあるため,周産期における慎重な経過観察を要する.今回我々は,妊娠中期のvenous pouchの検出を契機に胎内診断が可能であったDSMの一例を経験したので文献的考察を加えて報告する.
【症例】
31歳,2経妊1経産.自然妊娠成立後,近医における胎児超音波スクリーニングにて頭蓋内腫瘍が疑われ,妊娠26週時に当院胎児外来紹介初診となった.初診時,児の後頭蓋窩正中更から右側に41x36x28mm大の低輝度領域を認めた.内部血流は不明瞭であり,小脳は下方に圧排されていた.また,右前額の皮膚は肥厚し小嚢胞状超音波像が観察された.なお,胎内発育は週数相当であり合併異常は認められなかった.妊娠27週時には低輝度領域内部に18x13x12mm大の高輝度領域を認めた.MRI上,病変は白質より軽度低信号を示し,その内部には更に低信号を呈する腫瘤を認めたため,血腫の存在が示唆された.なお,後頭葉は外側に圧排されているものの,その脳実質構造は保たれていた.妊娠29週時の超音波検査では,病変内部の腫瘤はやや低輝度となり,その周囲にゆっくりとした血流像を認めるとともに病変への血液流入像も描出された.以上より,venous pouch内に血栓形成を伴うDSMおよび前額部リンパ管腫と胎内診断した.経過観察中,venous pouchの増大や心不全を認めず,妊娠37週4日に選択的帝王切開術にて男児分娩となった(出生体重2800g,Apgar score[1/5分値]:8/9点).生後,頭部CTおよびMRIによりDSMが確認され,右前額には血管腫を認めた.
【結語】
本症例では,超音波による注意深い観察により後頭蓋窩病変をvenous pouchと判断し,DSMの胎内診断が可能であった.また,MRIはvenous pouchおよび周囲の脳実質構造の評価に有用であった.