Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 消化器
腹部(その他②) 

(S620)

造影超音波が迅速な診断・IVR治療に有用であった胆嚢仮性動脈瘤と肝被膜下血腫の2例

Usefulness of CEUS for early diagnosis and IVR treatment of gallbladder arterial pseudoaneurysm and subcapsular hepatic hematoma

渡邉 学1, 塩澤 一恵1, 松清 靖1, 宅間 健介1, 岸本 有為1, 岡野 直樹1, 池原 孝1, 丸山 憲一2, 五十嵐 良典1, 住野 泰清1

Manabu WATANABE1, Kazue SHIOZAWA1, Yasushi MATSUKIYO1, Kensuke TAKUMA1, Yui KISHIMOTO1, Naoki OKANO1, Takashi IKEHARA1, Kenichi MARUYAMA2, Yoshinori IGARASHI1, Tasukiyo SUMINO1

1東邦大学医療センター大森病院消化器内科, 2東邦大学医療センター大森病院臨床生理機能検査部

1Division of Gastroenterology and Hepatology, Toho University Medical Center, Omori Hospital, 2Department of Clinical Functional Physiology, Toho University Medical Center, Omori Hospital

キーワード :

【症例1】
80台,男性.慢性心不全にて近医より抗凝固剤を処方されていた.右季肋部痛を主訴に当科受診,胆石,急性胆嚢炎の診断で入院となった.外科的切除術は希望されず,経皮経肝胆嚢ドレナージ術(PTGBD)を施行した.第14病日にドレナージチューブを抜去し,第16病日に抗凝固剤を再開し退院した.退院20日後に右季肋部に間欠的な鈍痛が出現,その後下血を3回認めたため再入院となった.単純CTで胆嚢内腔に細かい結石と出血を疑う高吸収域を認め,造影CTでは肝床側の胆嚢壁から内腔に突出する造影剤の貯留を認めた.同部位はBモード超音波(US)では淡い内部エコーを有する嚢胞性病変として描出され,Advanced Dynamic Flowモードで肝床側から嚢胞性病変内に向かうjet血流が確認され,動脈瘤が疑われた.造影超音波(CEUS)を施行したところ,血管相で嚢胞性病変内に強い染影効果を認め,この時点では胆嚢内腔への造影剤の漏出は認めなかった.PTGBDの合併症と思われる胆嚢仮性動脈瘤および同部位からの出血と診断した.CEUSでは胆嚢動脈の分岐が肝動脈前区域枝根部であることも判別でき,腹部血管造影を施行,胆嚢動脈末梢に動脈瘤を認め,速やかに塞栓術を行なうことができた.施行後の経過は良好であった.
【症例2】
70台,男性.悪寒,腹痛を主訴に近医を受診,血圧低下,単純CTにて肝被膜下血腫および腹水を認め,当院へ救急搬送された.来院時血圧85/55mmHg,HR 90回/分,診察所見では右季肋部に圧痛,血液検査所見では著明な炎症反応の上昇,Hb 7.8g/dlと貧血を認めた.造影CTでは胆嚢腫大および結石,一部胆嚢壁の欠損を認め,急性胆嚢炎による胆嚢破裂が疑われた.さらに胆嚢から肝下面被膜下にかけやや高吸収の液体貯留を認め,肝実質から高吸収域内への造影剤の漏出も疑われた.BモードUSでは急性胆嚢炎所見および肝被膜下に淡い点状の高エコーを有する無エコー域,カラードプラにて無エコー域内に突出するように動脈性血流シグナルとCEUS血管相で強い染影効果を認め,動脈瘤の存在が疑われ,急性胆嚢炎破裂に伴う肝被膜下血腫と診断した.CEUSで造影剤の漏出は描出されず,止血されていることが確認できたため,まずはPTGBDを施行,その後腹部血管造影を行なった.右肝動脈後区域枝からの造影で末梢血管の口径不整を認め,仮性動脈瘤と判断し,塞栓術を施行した.施行後の経過は良好であった.なお,両症例とも十分なインフォームドコンセントのもとCEUSを施行した.
【考察】
胆嚢仮性動脈瘤による出血は極めて稀であるが,致死的な経過をとることが多く速やかな診断と加療が重要である.一般に腹部血管造影においても胆嚢動脈の分岐部の同定は困難なことが多い.症例1においてはCEUSでextravasationがないことを確認できただけではなく,分岐部も予想することができ,速やかに経カテーテル治療へと進めることができた.症例2では,断定することはできないが胆嚢破裂により肝被膜下に胆汁が多量に貯留したため,A6より吻合する肝被膜下動脈が破綻し血腫を形成したと考えられた.CEUS施行時には止血されていることが確認できたため,PTGBD後,全身状態を安定させた上で速やかに塞栓術を施行することができた.
【結語】
今回,CEUSが迅速な診断およびIVR治療に有用であった胆嚢仮性動脈瘤と肝被膜下血腫の2例を経験し,示唆に富むと思われ報告した.