Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 消化器
膵臓② 

(S617)

膵囊胞性腫瘍との鑑別が困難であった,原発不明神経内分泌腫瘍の1例

A case of neuroendocrine tumor mimicking a pancreatic mucinous cystic tumor

宮崎 慎一, 野田 裕之, 森田 照美, 大廻 あゆみ

Shinichi MIYAZAKI, Hiroyuki NODA, Terumi MORITA, Ayumi OOSAKO

鳥取生協病院消化器内科

Gastroenterology, Tottori Seikyo Hospital

キーワード :

【はじめに】
神経内分泌腫瘍(以下NET)はさまざまな性格をもった,悪性度も異なった腫瘍の総称であり,その画像所見も多彩である.今回我々は人間ドックで偶然発見され,膵嚢胞性疾患との鑑別が困難であった原発不明NETの症例を経験したので報告する.
【症例】
症例は56歳の女性.近医での人間ドック腹部超音波検査にて,膵頭部に4.6cm大の多房性囊胞性病変を認め,精査目的に当院紹介となった.超音波内視鏡検査では比較的厚い被膜を有する大小不同の多房性囊胞性病変として描出された.一部に16mm大の結節も認められた.腹部ダイナミックCTでも膵頭部に隔壁を伴う囊胞性病変として認められ,壁の一部に結節を認めたが造影効果はみられなかった.内視鏡的逆行性膵管造影では,主膵管内に粘液栓を疑う欠損像は見られず,腫瘍と膵管との交通も認められなかった.以上の画像所見より粘液性囊胞性腫瘍を疑い開腹術を施行した.膵頭体部の上縁に約5cm大の囊胞性腫瘍を認めたが,膵とは線維性癒着を認めるのみで容易に剥離可能であり,腫瘍のみを摘出した.病理学的には嚢胞壁に索状構造をとる腫瘍細胞が増生し,免疫染色でSynaptophysin,Chromogranin Aが陽性,核分裂像は認めるが目立たず,MIB-1標識率も2%弱であり,Neuroendocrine tumor,G1と診断された.腫瘍辺縁部にリンパ節の構造がみられるが膵組織は認めなかったため,膵由来とは確定診断できなかった.リンパ節転移の可能性もあり注意深い経過観察を行っているが,手術後1年の現時点では再発を認めていない.
【考察】
NETは神経内分泌細胞に由来する腫瘍であるが,内分泌臓器のみではなく全身に分布するdiffuse neuroendocrine system(DNES)から発生することが明らかとなった.本症例もあたかも膵囊胞性腫瘍のごとき画像所見を呈したが,実際には腸間膜由来のNETあるいはリンパ節転移であると考えられた.特に小腸原発のNETは原発巣が小さくても腹腔内へ広範囲に転移することが知られており,厳重な経過観察を要する.